琥珀色の夕焼け

琥珀色こはくいろの夕焼けに

物寂ものさびしさを隠せずに

胸に込み上げるものを押さえ込んで

僕は立ち尽くしていた


このまま空に吸い込まれて

消えてしまいそうな僕は

この姿をいつまでとどめておくことが

できるんだろう


陽炎かげろうのようにかすんでいく視界に

ぼんやりとする頭


突然体に衝撃が走り

君が背中に飛び付いた


君は嬉しそうに僕を抱き締め

いたずらっこのように笑い

「また泣いてるよ」

と笑う


「あなたはロマンチストだから」

そう言ってさらに強く抱き締めてから

「うふふ」

と声に出してまた笑った


僕も笑って

君の手を握り締め

戻ってきた意識にほっとする


こうやって

空に吸い込まれそうになる僕を

いつも繋ぎ止めてくれてありがとう


今日も琥珀色だった夕焼けは

濃桔梗色こいききょういろの夜に変わり

僕らは手を繋いで

家路についた


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る