空を見上げて

紬季 渉

空を見上げて

青い空が好きだ


白い雲が浮かんで

気持ち良さそうにゆっくりと流れていく


堤防にすわって空を見上げる


こんな幸せな時間を忘れていた


いつも時間に追われて

せわしなく働き

空を見上げることを忘れて

毎日を過ごしていた


―――いや

空は見ていた

見ていたが

なんとも思わなかった


今日は晴れなのか雨なのか

明日は雨なのか雪なのか

傘が要るのか要らないのか


そんなことばかり考えていた


こんなにゆっくりと

空を眺める幸せを

私は忘れていた


遠くに鳥が飛んでいる

遠すぎて黒い点のようだけれど

確かにあれは鳥だ

二羽が連なって飛んでいる


私のすぐ横では蝶がひらひらと舞っている


優しい時間が過ぎていく

長いこと忘れていた優しい時間


思い出せてよかった

ここに来てよかった


休みの日にはまたここへ来よう

こどもにかえって、自然の一部になって

大の字になって空を見よう


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