『Fate/Zero』

『Fate/Zero』(TV/監督:あおきえい/2011~2012)


 聖杯。それを手にした者は、どんな願いでも叶え得るという。その聖杯を巡り、七人の魔術師によって行われる聖杯争奪戦を『聖杯戦争』と呼び、魔術師は自身のみならず、各々一体の『サーヴァント』を従え、この殺し合いに臨む。

 名声を得たい者、真理に至らんとする者、そして世界のあらゆる争いを抹消しようとする者。聖杯は誰の手に渡るのか?


 と、いうのが概略。

 だが、実際のところ、これらは言うほど単純ではない。サーヴァントとて英霊として存在し、人格を持っていて、自らを召喚した魔術師(マスター)の指示に従うことに誇りを感じたり、あるいは抵抗感を覚えたりする。

 また、マスター同士が結託し、かと思ったら裏切り、はたまたサーヴァントの強さによって協力関係を結んだり解消したりする。

 極めて戦略的な群像劇だ。


 群像劇とはいうものの、主人公はやはり存在する。衛宮切嗣(えみや・きりつぐ)。剣士のサーヴァント『セイバー』のマスター。

 彼は少年時代の悲惨な経験から、自らを捨てて魔術師を殺し回って来た。通称『魔術師殺し』。


 対する最大の敵は、この戦いに半ば強制的に参加させられ虚無の男、言峰綺礼(ことみね・きれい)。暗殺者のサーヴァント『アサシン』のマスター。


 互いに相まみえることなく、しかし確実に敵同士と認識し合う二人の男。

 生き残るのはどちらか? 聖杯を手にするために失っていくものとは? そして、聖杯の為す奇跡とは?


 つい熱く語ってしまったが、このアニメ、カッコいい役が多すぎる。声優陣のお名前を一々列挙するのは避けるが、制作元が『鬼滅の刃』を手掛けているufotableであることからして(十年近く前の作品とはいえ)、そのクオリティの高さたるや推して知るべし、といったところである。


 作画、エフェクト、背景といったところは実に写実的であり、このダークファンタジーの世界観に実に合っている。『鬼滅の刃』とも異なった魅力があるわけだ。

 複雑なストーリーだが、それは飽くまで『戦略的』と呼べるレベルであり、「誰が・どのように・何のために戦うのか」は極めて明確。このあたりの脚本化は見事である(原作は、虚淵玄・著の文庫六巻)。


 ただねえ。

 語らないと言っておいて難だけれど、主人公・衛宮切嗣(C.V.小山力也)がカッコよすぎるのよ。奧さんと娘さんを犠牲にしてしまうことに心を痛めつつ、それでも、時には魔術で、時には銃器で、あらゆる手段を以て戦い抜こうとする。

 逆に、何も犠牲にすることなどなかったはずの言峰綺礼(C.V.中田譲治)が、だんだん他人の言動に魅入られ、勝ちを狙いに行くところの心理描写なども、実に恐ろしく、それ故の魅力というものもある。


 グロいものはグロいのだけれど、『鬼滅の刃』が見られる方なら大丈夫だろう。

 ダークでバトル多めのファンタジーがお好きな方にはお薦め。

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