『花とアリス殺人事件』

※基本スタッフ・キャストは敬称略で。


『花とアリス殺人事件』(映画/監督:岩井俊二/2015)


 転校生と不登校生、そして二人の少女の中心となる怪事件を巡るアニメーション作品。

 ……と見せかけて。まずは映像がすごい。特殊な撮影技法が用いられているが、その技法・ロトスコープの威力が凄まじい。実写で撮影した映像をアニメに落とし込む技法だそうだが、その『アニメと実写の境目を行く感じ』、否、『双方のいいとこ取り』が実に美麗かつ見事な映像世界を構築している。

 最近では『シン・ゴジラ』が『いいとこ取り』した感があるが(モーションキャプチャーとかを使って)、アニメ要素を実写にはめ込んだ『シン・ゴジラ』と逆向きなことを行っている。

 が、『いいとこ取り』の度合いは今作『花とアリス殺人事件』の方が一枚上手である。『ああ、岩井俊二監督はこんなことをやりたかったんだな、やりたくて仕方がなかったんだな』というわくわく感が、画面の隅々から伝わってくる。実に瑞々しい。

 ストーリー的にややこしいことをやっているわけではないのだけれど、いや、それ故に、メインキャスト(鈴木杏&蒼井優)による『等身大の少女』感が輝いている。躍動感に重きを置いた、それでいてややもすると『粗っぽい』と評されそうな作画も、この作品にはバッチリ合っている。岩井俊二、恐るべし。

 実写ではできないこともたくさんやりつつ、きちんとアニメとして足元がしっかりしている。凄まじい作品であった。

 重苦しい映画ではないので、アニメ好きの方には是非一度ご覧いただきたい。


p.s.お薦めくださった宵待なつこさん、心より御礼申し上げますッ!

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