Works:213~たにしがにしと鳴いた日~

轟音が響く

莫大量の水が奏でる音だ


方向は地上から天空

水は空を覆う天蓋に激しく当たっている


さながら逆さ写しの滝のよう

滝には始点がある


始点とはたにしだ

たにしの口から激流というべき水の流れが生まれている


一条の水が天蓋を削る

たにしはただ一心に放っている


蒼天を穿っているぞ・・・

誰ともなく目にしている者が呟きだす


あるものが叫ぶ

いけ!と


また別の人は応援する

頑張って!


たにしはただただ水を放つ

それこそが己の意義だと言わんばかりに


短いとは言えない時間が過ぎた

訪れたのは静寂


人々が見上げた空には

抜けるような青が広がっている


群衆がざわめいた

この地に光を取り戻してくれたと


数瞬の間をおいて

皆が叫ぶ


たにし!

たにし!


それに呼応するかのように

たにしがにしー!と鳴いた

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