第2話

夫が亡くなって5年

娘と2人の生活にも慣れてきた


実家の両親は戻ってきて一緒に住まないか?と言ってくれたが、娘はお父さんとの思い出がある家を離れたくないようだった


美香は学校からおばあちゃん家に帰り、私は仕事終わると、迎えに行って、夜、一緒に帰宅


実家から我が家への10分

今日あったことをお互い話し合う


最近、少し大人びてきた娘も不思議とこの時間だけは素直にいろんなことを話した


毎日の大切な時間



「ねぇ、ねぇ、聞いてよ。お母さん」


車に乗るなり、嬉しそうに話し出す美香


「どうしたの?あっ、そうだ、担任の先生どんな人だった?」


「その担任の先生のことよー。すっごいイケメンなのー!」


「へぇ、美香がそんなに言うなんて珍しいね」


「だって、ほんとにカッコいいんだもーん」


「そうなの?じゃあ、今度の家庭訪問、楽しみにしとくね」


「うん!」




初めて会ったのは春の家庭訪問

美香が言ってた通り、なかなかのイケメン先生


初対面だからか?ちょっと、とっつきにくそうな感じだったけど、不意に見せる少年のような屈託のない笑顔にドキッとした



娘の担任の先生とは母親

ただ、それだけの関係

特に気に止めることもなかった


その関係が少しずつ変わっていったのは

いつの頃からだろうか


平井先生と呼ばなくなったのは…




娘が体調を崩して休むと必ず家まで出向いてくれる熱心な先生


玄関先で娘の話をした後、

次第に自分のことを話し始め、

だんだんと悩み事までも打ち明ける先生


「あのー、先生」


「あっ、すいません。つい、喋りすぎちゃって」


「私は大丈夫ですけど。もう時間も遅くなってきましたし」


「は、はい。では、失礼します」





同じことを繰り返してるだけの日々

生きていくことが精一杯だった


そんな時、キラキラした瞳で話してくれる先生に吸い込まれるように、私も自分のことを話してた。

もう、随分前から、人にこんな風に心を開いたことはなかった


先生の存在が私の中で次第に色濃く、

息をし始めてた。



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