p38 - 人形の踊り子


動け

蠢け

主の意志のままに


走れ

踊れ

主の意志のままに


だらんと垂らせた四肢を伸ばし

光を通さぬ眼を開き

自由のない人形は踊る


埃まみれのその身体

縫い付けられた糸にあわせ

右へ左へ踊り狂う


人形は張り付いた笑顔で笑う

踊りに魅入る観客を嘲う

自分で踊れぬ哀しさを笑う


そして踊りが終ったなら

人形は箱に仕舞われる

また主が人形を踊らさせるまで


人形に自由はない

自由に踊れやしない

永遠に無力な人形の哀しみは

誰にも気付かれず消え去るのだ

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