第43話 王都の籠城戦

「それでは、お館さま、今から作戦を開始します」

 アリストテレスさんが、作戦開始を通知してきた。

「アリストテレスさん、お願いする。それでは、エルバルド提督に指揮を渡す」

「エルバルド、皇帝陛下より指揮を預かります」

 元王国親衛隊のエルバルドは若くして軍の提督になっている。


「まずは4軸降下機で戦車隊と各隊を降ろせ」

 ホエから、ドローンを大型にした、垂直離着陸機に戦車を積み込み、兵士たちが降りて来た。

 ホエがいくら大きくても、垂直離着陸機を何機も積む事は出来ない。そのため、4機が交代で機材をホエから降ろしている。

 城の前に戦車12台と兵士300人が並んだ。

「まずは鳥人隊が相手の揺さぶりをかける。下手な矢に当たって死ぬなよ。よし、行け」

 空挺部隊隊長のゴウが命令を出した。


 ホエから白い鳥人たちが飛び立つと城の外塀に向かって行く。外塀の上からは矢が放たれるが、鳥人たちはそれを華麗に躱す。

 そのうち、矢を射るのに疲れたのか、飛んでくる矢が少なくなった。

「よし、ゴウ隊出動!」

 ゴウ隊長自らが率いるパラシュート部隊が、外塀の内側を目掛けて飛び出した。

 それを見て、再び矢が射られるが、ゴウ隊はマシンガンで応戦しつつ、塀の中庭に降りて行く。

 その後に鳥人部隊も続いた。塀の内側に降りた部隊は、塀の外壁門を目指し、警備する兵士を倒して外壁門を開いた。

 すると外に待機していた兵士が、戦車とともに雪崩れ込む。

 ホーゲンが長剣で華麗に相手を捌く、その後ろにはアシュクも居る。

 アシュクは両手に剣を持っている。二刀流だ。

 ウォルフは背中に弓を背負っているが、今は剣を使っている。

 それはポールもだ。ポールの隊は全員が熊人で、重い戦斧で戦う。

 あっという間に、中庭を制し、本丸の城の中に立て篭もる憲兵隊と元王宮警備兵に再度勧告を行う。

「ここはポールに勧告に行かせよう」

 ポールは白熊人だ。相手も降伏するかもしれない。


 ポールが城の前に出て行った。

 それを城の中から見ていた白熊人がびっくりしている。

「籠城していても応援は来ない。直ちに投降しろ」

 ポールが叫ぶ。

 すると、城の中から応答があった。

「お前は白熊人じゃないか。何故、侵略者側に就いている?」

「我々は住民を苦しめていた女王から住民を解放したいだけだ。女王が住民を攫っては、生を吸い取るのは知っていた。

 お前たちだって王宮でそれを見ていただろう。知らないとは言わせないぞ」

「……」

 立て籠もっている白熊人が黙った。

「それに我々の皇帝閣下と王妃さまたちも王宮に連れて行かれ、生を吸い取られようとした。それを抵抗しただけだ。

 もし、住民が、お前たちの行う政治で良いというなら、我々はこのままこの国を出よう」

「……」

 城の中がまた黙った。

 俺たちの軍の後方に、スノーノースの下級兵士がやってきて叫ぶ。

「我々はいつ、女王から生を吸い取られるかという不安があった。女王が死んでその憂いが無くなったことは、安心して暮らしていけると思っている」

 どうやら、下級の兵士たちは俺たち側についたようだ。

 だが、城には白熊人に代わって宰相が出て来た。この宰相も白熊人だ。

「何を言う。学がなく、どうやって生きていくか分からぬお前たちを導けるのは、我々しかいないのだ。

 そんな旅人が、お前たちを安心して暮らせるようする事など出来ようか?」

 何と言う言い分。完全に上から目線だ。

 ポールの横に俺が出て行って言う。

「宰相、学が無いと言うが、宰相は文字が使えるのか?」

「文字?文字とは何だ」

「「「「「ははははは」」」」」

 それを聞いたエルバンテ軍から笑いが起こる。

「な、何が可笑しい」

「いや、文字を知らなかったからだ。エルバンテ領では子供でも使えるぞ」

「だから、文字とは、何だ?」

 文字については、アリストテレスさんが出て来て、説明する。

 それ以外にも、数字や地理などについて説明する。

 俺たちが既に衛星写真から、この北の国の地図を作っている事、GPSを使って、場所を知る事が出来ること、電話での画像通信を教える。


「そ、それがどうした。そんなの知らなくても生きていける」

「そうだな。だが、戦争には勝てない」

 俺が城の一番高い塔を破壊するように言う。

 すると1台の戦車の砲塔が高い塔に向いた。

「今、あそこに人はいないだろうな。今からあの塔を破壊する」

「そこからは矢も届かないし、魔法も届かない。どうやって破壊すると言うのだ。嘘もいい加減にしろ」

 宰相は相変わらずエルバンテ軍を認めようとしない。

「では、遠慮なく。撃て」

「ドーン」

 凄まじい音と共に、砲身から弾が出て行き、残った砲身からは白い煙が出ている。

「ヒュルルル、ガーン」

 弾が塔に当たると塔が傾き、落ちて来た。

 それを見た宰相は目を見開き、何も言わない。

「これで分かっただろう。いい加減に投降しろ。お前たちに勝ち目はない。拒否するようなら、次はお前たち目がけて砲弾をお見舞いするぞ」

 塀の上に居た白熊人や熊人が、ざわつき出した。

「宰相、投降しましょう。我々はどうやっても勝ち目はありません」

「折角、あの女王に代わり、この地を治める良い機会だったのに…」

「宰相、投降しましょう」

 宰相の周りの兵士が騒ぎ出した。

 その時だ。宰相が投降を促した兵士を斬った。

「ぎゃー」

 兵士は塀の上から落ちて死んだ。

「こうなれば、全員死ぬまで戦うんだ。この地は私の物だ。全員私のために戦え」

 それを聞いた周りの兵士が宰相に切り掛かり、宰相は全身を斬られて絶命した。

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