計画実行
目標までもう20m程になる頃で、アイテムボックスからスタミナドリンクを取り出す。
「さて、勝負所だ」
それを一気飲みすると、不味い栄養ドリンクのような味が喉を通り過ぎる。
目標まで、距離10m。
「クロ、そっちにヘイトが向いた!ちょっとの間下級魔法のみでいけ!」
「えー、わかったよ」
「アラン!回復忘れないで!」
至近距離で、草影に隠れながらタイミングを伺う。
まだ、まだ大丈夫だ。
8m。ブルースライム達は待つことなく、向こうからじりじりと押し寄せてくる。
7m。もう少し。まだ狩りに夢中で気付く動作も見せない。
6m。すぐ目の前では、激しく戦闘を繰り広げている。
はは、まだ俺に気付かないか……おっと、油断はいけないな。
5m。ここでストップし、ブルースライムの距離を確認。
――よし、今!!
草影から飛び出し、一気に目標である魔法使いへ疾走する。
魔法使いへと一瞬で近付いた俺は、その勢いのまま魔法使いの首辺りを切り裂く。
分かってはいたんだが、面白い程手応えがないな。
「っお前は!」
魔法使いのその声に反応し、大盾と弓使いがこちらを見た。
「さっきの雑魚じゃないあれ!」
「テール、ヘイト頼む!あいつは俺がやる」
「わかったわ!」
弓使いに一度狩っているモンスターのヘイトを預けて、大盾が俺に突っ込んで来る。
うん、一瞬にしては良い判断だ。
……ここからは完全に避けに徹する。
当然だが、敏捷極振りの俺に、大盾との一対一の攻撃なんて届くわけがない。
「雑魚野郎が!邪魔すんじゃねーよ!」
叫びながら突進してくる大盾。
大盾を構えながら突っ込んでくる様子は、中々迫力がある。……当たらないけど。
んー、闘牛的な?
俺は持ち前の速さを生かし、わざと大袈裟に動いて、大盾を煽るように逃げ回る。
――『こんな敵には、範囲魔法だよな?』
そう、後ろの魔法使いへ伝えるように。
「クロ!」
「任せろ!ふふ、初PKだ……!ファイアーウェーブ!」
魔法使いは、魔法名を唱える。
おそらく、魔法陣が完成するのはあの速度だと10秒程だろう。
10秒なら、あそこ辺りか。
横目で俺の『味方』が現れる、『地点』を予測しておく。
魔法陣完成まで、あと5秒。
弓使いは、mobのヘイトで何も出来ない。
大盾も俺の動きについてこられない。
――ほら魔法使い、お前が頼りだぞ?
魔法陣完成まで。
3秒。目線を『地点』へ。
2秒、『地点』まで駆け込む。
1秒。
0。
魔法使いの杖から、俺がいる『地点』一帯を燃やし尽くそうと炎の波が襲いかかってくる。
それを確認した俺は、出せる力全てを使う勢いで、その『地点』から『味方』のいるであろう場所へと跳びこむ。
俺の後ろから、とてつもなく広範囲の炎が襲ってくるのを見て、思わずニヤける。
――その攻撃は、俺には届かない。
なぜなら。
『青い壁』が、炎を受け止めたからだ。
「ふひ、ざまあみ……え?」
魔法使いは混乱する。
……その訳は。
炎で燃やし尽くした所から、大量のブルースライムが現れたからだろう。
「おいおい、洒落になんねーぞ……」
同じ光景を見た、大盾が嘆く。
そうだな……MMO、いや全てのゲームにおいて、ヘイトというものは、ダメージが大きい方へ向く。
当然、ブルースライムの攻撃対象は。
――ドでかい魔法をぶっ放した、あいつへと変化する。
はは、面白いなあ!
「うわあああ!やばいって!」
「くそ!クロ!俺が出来る限りヘイトを……」
喚く魔法使い、ヘイト集めに必死な大盾。
そうしてる間に、ブルースライムが水鉄砲?の前動作に入っている。
……計画通り。
さて、ここは『味方』に任せて弓使いの方へ行くか。
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