ウツムキちゃんとポジトくん
naka-motoo
ウツウツポジポジしましょう
わたしの名前はウツムキ。
一応、女子。
見た目はまあ結構いいと思うんだよね。
月影を反射する池の水面に顔を映してみたことがあったんだけど、まつ毛も長いしその土台の目はぱっちりツリ目でしかも切れ長。
へへ。いーでしょ。
でもね。自分が何なのかわたしにもよくわからないんだ。
わたしの気配を感じてくれた男の子は何人かいたけど、花の薫り、とか、風の匂い、とか曖昧なことしか言わないんだもん。
人間じゃなくってわたしのお仲間っぽい子が評論してくれたことはあったけど、ひどいんだよ。
「お前は『
って。
まあ、わたしがアプローチする男の子は全員前向き全開のポジティブな子だし、言いたいことは分かるけど。
え。どういう意味かって?
それはね。
わたしの餌はポジティブシンキング、ってこと。
ポジティブな男の子のポジティブな考えをわたしが食べちゃったらどうなるか分かる?
わたし好みの
さて、今日も風は順調、気温も上々。
ポジポジした男の子の匂いがこの上空まですうっ、って流れてきてるわ。
ん⁈
ちょっと、これ凄いかも。
ポジティブなんてもんじゃないわ。
もう、満ち満ちたエネルギーが発散を求めて爆発寸前、って感じ。
あ、あの中学校ね。
・・・・・・・・・・・・
「ショウッ!」
「わ!」
「よっしゃ!」
「げー、ポジト。引退したのに動きがキレまくってるな」
「当然だろ? コウ高校に推薦入学決まったんだからブラッシュアップしとかないと」
「コウ高からスカウトされるなんてうちの弱小バドミントン部始まって以来だもんな・・・でもよかったのかよ?」
「え。何が?」
「だってポジトは成績だってトップクラスだし。親から進学校に行けとか言われなかったのか?」
「別に。勉強なんてどの高校でもできる。でもバドミントンのための最高の環境はコウ高じゃないと得られない」
「大人だなあ・・・同じ中3とは思えねえよ」
ほー、バドミントンの強豪校からスカウト。いいねいいねー。
ポジトくんていうんだ。
前途洋々、しかも、背がそんなに高くなくってかわいいし。
よし、捕食開始!
「わ!」
「ん? どうした、ポジト?」
「え・・・見えないのか?」
「何が?」
「そこに人が立ってるだろ?」
「人?」
「ああ。その、なんていうか、女子が・・・」
「女子? かわいいのか?」
「ああ、かわいい・・・って、どうしてこの状況でかわいいかどうかが主題になるんだよ!」
「状況とか言っても俺には何も見えん」
「あ・・・消えた」
「消えた、って・・・ポジト、お前疲れてんだろ? 受験勉強しなくてもいいくせに予習復習してトレーニングもハードにこなして」
「うん・・・ちょっと顔洗って来るわ」
あぶないあぶない。
でも、見えるんだ! びっくり。
初めてだよ、こんな子。
・・・・・・・・・
「ぷうっ。冷た。・・・でも、さっきのは何だったんだ。幻覚? まあ確かにかわいい子だったけど。ショートで小柄で。でも、こんな季節に水色のワンピースに裸足じゃなあ・・・現実なわけないよな」
「現実なんだよね、これが」
「わあ!」
「ポジトくんでしょ? わたしはウツムキ」
「え? え? やっぱりさっきいたんだ⁈」
「そう。んで、キミのこと、気に入っちゃった。さっそくいただいていいかな?」
「な、なにを?」
「君の前向きな想い」
・・・・あれ?
ポジトくん固まっちゃったな。
えーと、人間語、合ってるよね?
「あ、会っていきなり告白?」
「告白? あ、そうか」
そうだそうだ。
『君の前向きな想い』なんて言うと愛を語る言葉に聞こえるんだな。
まあ、いいや。好都合だわ。
「で、ポジトくん、返事は? 時間なんて関係ないしわたしが誰かは知ってるでしょう?」
「えと・・・2年生・・・?」
「そうそう。(
「返事は・・・お、OKで・・・」
「わあ! さすがポジティブなポジトくん。一発OK! じゃあ、早速」
「え? もう?」
「そう。すぐ」
おー。
ポジトくん、もう目をつぶっちゃってる。
妄想まで超ポジティブ。
告白即キスって発想が清々しいわあ。
まあ、ちょっと期待には添えないけど・・・
えーと。左手でポジトくんの頬を固定して・・・それから右手をゆっくりあげて親指で中指にエネルギーを貯めて貯めて・・・・
ビンッ!
「痛って!」
よし。バルブ解放成功!
「デ、デコピン⁈」
「あ。やっと気付いた?」
あとはポジトくんからアンロードしてわたしの方にローディング、っと。
ほらほら、萎えてきた萎えてきた。
「あ・・・れ? なんか、頭が重い・・・プリズムみたいなのがチカチカしてる」
「うーん。いい具合だねえ。ポジトくんぐらい前向きエネルギー満タンならちょっと偏頭痛がするだけでおさまるから安心してね」
「偏頭痛って・・・アタタタ」
「よし! ポジティブシンキング100ガロン、ご馳走さまっ!」
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