論香さんはセレブ様と仲良くしたい
暗黒星雲
黒蝶は涙を流さない
私は琴裕論香。
読み方がわからないって?
ふん。自分で考えなさい。
ま、ちゃんと読めたら一晩つき合ってあげてもいいわよ。
私は夜の街を彷徨う黒い蝶。
何もしないのに男どもが寄ってくる。
私の脚線美?
確かに。自分でも惚れ惚れするわ。でも違う。
フェロモン?
これも違うわ。
そう、お金。お金の魔力よ。
私にはお金の魔力がある。
これに男が群がって来るの。
でもね。
この男たち。
全て。
絶対に。
間違いなく。
貧乏なのよ。
まあ、私に近寄って来るだけで怪しいんだけど。
私に構って破産しない事ね。
わたくしは桜近暮佳と申します。天然の金髪に108㎝Iカップの胸元が殿方を悩殺するようでございます。
わたくしといたしましては、色々な殿方とお付き合いしたいと考えておりますのに、思うように参りません。
私を手に入れた殿方は決まってわたくしを装飾用の人形のように扱うのです。
そして自由はない。
私は自由奔放に生きたい。
そう切に願うのです。
あまり出会わない二人がばったりと出会ってしまう。
それは運命のいたずらか。
「あら、今夜も大勢引き連れて豪勢なお出ましですこと」
最初に声をかけたのは暮佳の方だった。
今からパーティーにでも行くのだろうか。白いドレスをヒラヒラさせている。
突き出た胸元が悩ましい。
「大勢って。こんだけ貧乏人に集られて何処が豪勢っていうのよ。人数は多いけど、資産の合計じゃマイナス確定よ」
黒いドレスに身を包んだ論香が答える。
スリムな脚線を強調するかのようなスリットが男心をくすぐる。
「確かに、殿方の品質も重要ですわね。資産合計マイナスじゃ集合した意味がございませんわ。おほほほほ」
高笑いする暮佳だった。しかしその心情は先ほどの言葉とは反していた。
(ムカつく貧乳娘ね。資産なんて関係ないのよ。大勢の男に囲まれて……羨ましいわ!!)
「貴方はどうなの?いつも同じ男。お金持ちだか知らないけど、少しは羽を伸ばしたいんじゃないの?」
嫉妬丸出しで挑発する論香だった。彼女も暮佳が羨ましくて仕方がない。
(この爆乳ホルスタインめ。資産家セレブ様とイチャイチャしおってからに……許すまじ!)
「貞操も淑女の務め。貴方にはご理解いただけないようね。このヤリマン娘」
「言ったわね。私だって好き好んで貧乏人ばっか相手にしてるんじゃないわ」
二人のにらみ合いは続く。
見かねたセレブ男が切り出す。
「論香ちゃんだったかな。今夜は僕たちと一緒に来ないか?いいだろ暮佳」
暮佳はにやりと笑う。
「いいわよ。貴方がよければ」
論香は少し考えてから返事をした。
「ムカつくけど、今日はあなたに付き合ってあげる」
その一言に論香の引き連れていた男たちから不満が溢れてきた。
「論香ちゃん俺たちはどうなるんだよ」
「そうだよ。論香ちゃん置いて行くなんてひどいよ」
不満たらたらの男たちに対し論香はきっぱりと宣言した。
「金持ってない男は黙ってな!!」
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