昔勇者で今は骨
佐伯庸介/電撃文庫・電撃の新文芸
昔勇者で今は骨
プロローグ
プロローグ(1/2)
神々が大地より去り、肉を持って生きる者たちが世界の主となって千年。
大陸
魔は世界を
しかし。世界に一人の勇者、アルヴィス・アルバースとその仲間たちが現れ、人々と国々の力を束ね、魔の群を押し返し始めた。
そしてマルドゥ歴一〇十五年。
「さらばだ、三界の希望。神と精霊と大地の代行。祝福を与えられし人。──勇者よ」
しかして、人類の命運は今
勇者アルヴィスの胸から
幾多の
「ア────アルヴィスッ!」
「っ……! イザナ! 全速で
老剣士マガツが風の
「チィ、やはり通らんか……!」
「色気出すなジジイ! どうせ
反撃の
イザナと呼ばれた女性が、必死の
戦いの
(終わりか……!?)
刀を握るマガツが
神官イザナが口を模した補助
しかし、傷の修復と
元々、アルヴィスを含めた四人で
(なんて
それをイザナも理解している。それでも、聖剣はアルヴィスの
────イザナ
愛する男の声を、イザナは幻聴と思った。声の主は目の前で歯を食いしばったまま動かない。
────聞け、イザナ
は、とイザナは勇者の傷口から顔を上げた。肉声ではない。心に直接響かせる
────頼みがある
「な、何?
──無駄だ。間に合わない。
即座の断定にイザナは口をつぐむ。勇者は魂の状態であっても、冷静に状況を
その彼の、頼み。
「待って……!」
察して、イザナは必死に止める。しかし、声はためらわず、決意を持って響く。
────頼む。今だけ、かつてのお前の力を、頼む──!
予想していた指示に、イザナは顔を伏せる。
出来るわけがないと心が叫んで、その実、理性は
手段はそれしかないし、彼はそういう男だ。──勇者なのだから。
勇者だから、状況に対し、折れない。夢を見ない。──迷わない。
魔王城の最深部に踏み込める機会は今しかない。
魔王が手傷を負っている状況は今しかない。
──人間を
アルヴィスの声が再び響く。イザナは涙を
体が急速に
死によって体と離れた魂が、今は逆に
終わった生を、魔力という名の
術法には種類あれど、目的は一つだ──死者の復活。
正当の術法、聖者神官が
だがしかし。
いくつかの差異から
────手っ取り早い。
「──
やがて。アルヴィスはイザナの
手を見る。骨。顔を触る。肉の感触は無い。
何もない。
自らの体を構成していたほぼ全て。この骨格以外は何もない。
(だが、体は動く)
「いざ歩き出せ、その足で。いざ世界に戻れ。その体で。
魔力の高まりに、戦う仲間二人と魔王オルデンもこちらの異常に気づいた。
「イザナ…………!」
「馬鹿な、アルヴィス!」
仲間
「正気か、貴様──」
ほんの
勇者アルヴィスは立ち上がる。立ち上がれる。
剣を持つ。魔王の障壁を唯一打ち破る祝福の聖剣は、今や不死者なれど正真正銘の剣の主、アルヴィスの
それを無視して、アンデッドを動かすただ一つの理・魔力を
(──終わらせるぞ、オルデン)
声を出す術は
生前に迫る魔力の放出で、スケルトン・アルヴィスは魔王の
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