番外編 雑記と本日のお勉強 正義について

 今回は番外編だから別に読まなくてもいいのだけれど、あまりにも面白かったから記事にしてみようと思う。


 というか次のお話を考えるために正義とは何かについて考えねばとクロワッサンを食べながら思ったので、急遽読書タイムといたしまして←企画を進めんかい


 というか企画とは完全に関係ない話だけど、書いている小説の副題を考え付いた時に、「あれ?なんかこの副題どっかで聞いたことあるぞ?」とか思って検索してみたら、思いっきりあった。


 そりゃ小説のタイトルなんて被ることはあるだろうけど。


「ダウン・ツ・ヘヴン」って思いっきり森博嗣の小説にあった。しかもいつか読もうと思っていたスカイクロラシリーズのタイトルだったからさあ大変。


 ということで、ある作戦を決行した。


 偶然のかぶりというわけではなく、実際に読んでみてリスペクトという形にしようと!←謎の思考回路


 で、読んだ。


 空から生まれてきたことを地上に落ちるという風に考える。


 だから、人が落ちたくないと思うのは、もう一度生まれたくないからだろうか。


 そう問いかけられた文章に心を奪われた。


 落ちることを死ぬことではなく、もう生まれたくないと捉える。


 物語全体から感じる閉塞感や生きづらさを感じる。


 この空気感は見習いたい。すごい。


 でも、全ての小説の中で『タイトルだけが好き選手権!』を開催したとしたら、


 やっぱりスカイクロラシリーズの二作目『ナ・バ・テア None But Air』だと思う。


 一見、これだけの文章では意味が分からないのに、響きだけはやたらといい。


 ノンバットエアー。空気以外何もない。


 響きと意味合いが好きすぎてポケモンのニックネームにまでしたくらいだ(あいたたた)


 小説好きな皆さんの『タイトルだけが好き!』という作品はなんだろうかと気になるところである。







 さて、今までの独り言は、今書きたかったものと全然違うのである←お前はここでも思考がそれるのな


 家を出ないと誓いつつも薬局とパン屋と本屋に行って2冊買ってきた。


『人は、なぜ他人を許せないのか』 中野信子著 株式会社アスコム 2020年3月16日 第6刷


『正義の教室――善く生きるための哲学入門』 飲茶著 ダイヤモンド社 2019年6月19日 第1刷発行


 で、読んだ。


 なんだかんだ、両方とも読み終えた。


 他人を許せない傾向はなんとなく日本人って強いように思えるけど、発展の歴史的に考えてそういった人種が生き残ってきたからこその賜物ということは、よくわかる。


 銃・病原菌・鉄でも指摘されていたことだ。その地域の気候・風土・地理的条件はバカにならない。環境に合わせて人はその土地であった生き方が選択されていく。


 で、島国であまり敵国から攻められることが、地理的条件上少なかった日本にとっては、最大の問題は中にある。


 どうやって日本という国を治めていくかといったところが、外部の敵に対する措置よりも優先的となる。


 内向的と呼ばれる所以もそこにある。敵じゃなくて味方とうまくやる方法を身に着けるために、協調性とかコミュニティとかの相互扶助精神が醸成されたのだという。そりゃそうだと納得できる。


 だから日本人は、自分たちの外に対して排他的なのだ。内に対する対策に特化していったのだから。


 敵と戦うことより、味方と戦わないために苦慮してきたとも言えるのかもしれない。


 もう一つは、常々思ってきたけれど、自然災害が多いということも理由に挙がるらしい。やっぱり!


 自然災害に対して人ができることなんて限られていて、地震が起きたり雨や土砂崩れ災害で作物が育たなかったらどうしていけばいいか。


 個人ではどうしようもないことが多いゆえに、最も生き残りやすい戦略として、集団で協力するといった体制が他の諸国よりも発展したということ。で、協力的な遺伝子を持った人々が生き残りやすかったということでもある。


 で、そういった集団の目的が個人より優先される遺伝子を持つことで、日本の社会はやはり集団のための社会となる。


 だから日本では、破壊的な天才よりも従順な優等生が好まれる。


 集団の規律を守り、個人よりも集団目的を達成するには何かに歯向かったり破壊して新しいものを想像するよりも、慣習に従って黙々とやり続ける人材が求められる。


 同調圧力っておそらく外国よりも日本の方が感じやすいんだろうなってのはそのためだそうで。


 他人を許せないってタイトルは脳科学的な見地での考察もある。というかこの方はそれが本業なのだし。


 まあざっくりと。自分が間違っていないから他人を攻撃することでドーパミンという快楽物質が出ます。タバコとかでも出る奴。


 他人を攻撃することは脳内麻薬を呼び出すのだ。


 やばいすでに長くなってきたからやめよう。もし興味があったらまたこの本でも読んでくださいな。






 で、やっと本題(前振りの長さ)


 本当に面白かったのはこっちだ(中野信子先生ごめんなさい)←謝れるいい子でちゅね。


 正義の教室って前々から気になってみたけど、正義について考えようと思って買ってみた。


 というか「個人個人で正義も価値観も時代にもよって違うのだから、個人の価値観でいいよね」と正義については半ばリタイア気味に考えていたので、正直本でも読まないと自分で書けそうになかったからだった。


 この人は哲学についてを非常にわかりやすく説明する著作を何冊か書いていた。買ったことはなかったけど、立ち読みでよく次に読む本を決めるためのお世話にはなっています。


 いつもお世話になっております。金銭的にはなんの還元も行っていなくてすいませんねえ。


 てっきり正義に関して過去の著作や歴史を振り返りながら説明していく本だと思っていた。


 いや、大筋間違ってはいないんだけど、完全に僕は解説書として買った。


 で、読んだ。















 完全にラノベだった。


 しかもラブコメだった。



















 これは予想外だったぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!


 しかもおもしろかったぞーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!←ならいいじゃん。


 哲学全般について学びたいとかいう酔狂な人がいるのなら、合わせて『ソフィーの世界』ヨータイン・ゴルデル著を読めば、大体の流れはわかるよ。


 主人公は生徒会長の正義まさよし。それと三人の美少女と倫理学の風祭先生が主な登場人物なんだけど、そのキャラクターのすみわけが面白い。


 三人の美少女たちは、それぞれの正義に関することなるスタンスを持っている。


 主人公の幼馴染である千幸ちゆき→ジェレミー・ベンサムの提唱した功利主義(最大多数の最大幸福)


 生徒会庶務で自由な先輩のミユウ(自由)→古典的自由主義と言われるリバタニアリズム(幸福よりも、自由こそが人間が生きる上で最大限尊重されるものである)


 生徒会副会長である倫理→宗教の正義である直感主義(見えない、聞こえないし触れられないけれど、絶対的な正義や善はどこかに存在するという立場)


 正義を語る上で、結局はこの三つの観点に分類されるというのだ。


 功利主義とリベラリズムないしリバタニアリズムについては語ることができなくもないけど、直感主義というものの概念が自分に抜けていたことに気づく。


 でも実は、直感主義の概念が一番身近で遠いものだ。


 人を殺してはいけないという時に、功利主義者ならこう言う。


「人を殺すことによって、自分が殺される危険性もある。自分自身が損なわれることで、幸福が奪われることはいけない」


 功利主義では、幸福の総量こそが正しいことであるという考えに基づいている。


 幸福を数値化する。殺人は幸福の総量を下げるからいけない。


 で、自由主義者ならこう言う。


「人を殺すことは、何物にも代えがたい自由を奪うものだ。だからやってはいけない」


 自由こそが最大にして最高の価値であるとする。殺人は他者の自由を奪う行為であるためいけない。でも自由主義にとって、幸せよりも自由が優先される。だから殺してくれと言われたとしたら、殺しても殺さなくてもどっちでもいいという回答にある。それを決めることこそが自由であるからだ。


 で、直感主義者ならこう言う。


「人を殺すことは、ただ単にいけないことだ。いけないことだからいけないこと」


 正義や善というものは、人間の考え出したものの外にある。けれど、なんとなくみんなが知っていて、なんとなくいけないと思っている。だからこそ、どこかに絶対的な正義や善というものはあるんだ、という立場だ。


 彼女たちはそれぞれの主張を持っているけれど、風祭先生にその思想の利点と問題点を指摘されるといった物語展開を辿る。


 これ以上はネタバレになるから言えないけれど、それがきちんと彼女たちの過去やトラウマについてに繋がっていくところに、きちんとした物語性があるのだ。


 そしてもう一つの物語の主題ということに繋がっている。


 少しだけネタバレ。


 いじめによる自殺が起きて、学校による対処がうまくなされなかったため、当然世間からバッシングを受けたというバックボーンから、彼らの通う学校には監視カメラがいたるところに仕掛けられるようになった。


 学生たちはそんな見張られているような生活が嫌で、監視カメラの撤廃についてどうするのかについて、一つの結論を見出す。


 そういった社会問題にも切り込んでいくところが面白い。


 ラブコメタッチで描かれているけれど、正義についてのお勉強もできるという一粒で二度おいしい。


 で、ラブコメって書いたからには、なんらかの恋愛的な決着も付くわけなんだけど……


 正義の概念と問題点を学んだ正義が、一体誰を選んだのかというところも、見どころの一つだと思う。






 この本を読み終える寸前に、この物語を読んだ人たちの感想についてググった。


 当然ネタバレは見なかったけど、「ラストは裏切られた」とか「ラストは予想できませんでした」といった情報だけは何個か見かけた。


 疑り深い会(嫌な会)の名誉会員である僕は、物語のどこかに伏線が張られているであろうと思い、注意深くさっと読んだ←どっちだよ。


 うん。


 構造主義の話だったり正義が自分のとあることについて語る時に「おやあ」と思ったけど、やっぱりかwwwwwwww


 やっぱりそんなオチか!


 というか、この本を読む前にあの話を書き終えておいて良かった……(こっちの事情)


 でも、物語展開の中で二つは先を読みきれなかったことが悔しくもあり、とてもおもしろかった要因でもあると思う。


 とりあえず正義の教室については、軽めのタッチでラブコメ風味に書かれているから、高校生でも読みやすいと思う。


 ぜひとも読んでもらいたい一冊だったと思う。

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