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 受粉の季節が終わる頃、ある山奥に住むオーナーから連絡があった。

 「蜂ロボが居なくなった。巣箱は無事なのでトラブル時の集合スイッチを押したが、1匹も戻ってこない」

 時々、自分で壊しておきながら平気で居なくなったと言い、無料保証を受けたがるオーナーがいる。しかし、どうやらこのオーナーの話は本当のようだ。だとしたら大問題だ。蜂ロボだけ運ぶには、サーバーのかなり深部へ侵入し、いじくる必要がある。そんなインシデントは聞いていないがとにかく現地へ行こう。幸か不幸か、俺が現在地から車で行ける場所だ。

 「すぐ伺います。あいにくトラックが出払っていまして、交換品は後日お届けになります」

 「そうかね。まあ、電子地図を見る限り、蜂の仕事は済んでるようだから構わんよ」

 俺は丁寧な常套句を並べて電話を切り、社名の入った車でフリーウェイをかっ飛ばしてオーナーの果樹園に行った。

 そこへは、とある市街地を抜けるのが一番早い。スピード違反ぎりぎりで通り過ぎようとしたが、どういう訳か検問所があって引っかかった。自分の番が来る。どうやら通行止めらしい。パワーウィンドウを少し開ける。警官が言う。

 「こっちは通行止めだ」

 「山の方に行きたいのですが、迂回路はありませんか」

 「なんの用がある?」

 「えーと、私は蜂ロボの業者でして、果樹園に向かうところなんです」

 警官が俺と車をにらむ。

 「あんた、アラン・インダストリーの社員か?」

 「ええ、まあ、一応、社長です」

 俺は社員証を見せた。どうせ聞かれるだろうから免許証も出しておいた。

 「ほかに社員は?」

 「私だけです」

 警官は舌打ちした。態度の悪い警官は車の窓に、張り付くように近寄って言った。

 「この先で、お宅の蜂が流出しとるんだ」

 「……は?」

 俺は間抜けな返事をした。

 「ロボットの大群が、そこら中ブンブン飛んでいるんだよ。先導するから付いて来い」

 山の中に散らばったのか。回収費……いや、それは後で考えよう。俺は少々パニックになりながら、サイレンを鳴らすパトカーを追いかけた。

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