美しい時間

 僕はもう、世界が綺麗なものだけで出来ていないことを知っている。

 空を見上げれば、そこに絵本の嵐の空みたいに、波打つ真っ黒な闇が見える。


 でも、たとえば――


 夜、布団の中で闇を恐れておずおずと伸ばす小さな手の温もりに


 朝、目覚めた時、すぐそばにある安らかな寝顔に


 震えるような幸せと共に、僕は願わずにはいられない。


 今、この時だけば――


 君たちとの間にあるのは、どこまでも透明な美しい時間だけでありますようにと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る