日常より

原田ダイ

ジングルベルが聞こえる

 ジングルベルが聞こえ始めると

 僕はいつも思い出す。

 君が初めてサンタからプレゼントを貰った日のこと。


 朝目覚めて、枕もとのプレゼントを見た君の顔。

 最初は驚いて、驚きが感動へ、それから喜びに変わっていくのを見た。


 サンタが来た!


 君の心の声が聞こえた。


 特別な、本当に特別な、多分一生に一度しかない、宝物みたいな瞬間。


 プレゼントを持って世界中を回るサンタの気持ちがわかる。

 こんなすごいご褒美があるんだから。


 たとえば、僕がうんと歳をとって

 いろんなことを忘れてしまったとしても。

 あの日の君を忘れないでいたい。


 空っぽになっていく宝箱から、これだけは無くさないように、僕は神様にお願いしよう。


 君はもう忘れてしまったかもしれないけれど。

 僕はずっと覚えていよう。


 ジングルベルが聞こえる度に、あの素晴らしい朝に帰ろう。


 メリークリスマス。


 君のお父さんになって本当に良かった。


 メリークリスマス。


 生まれて来てくれてありがとう。

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