夢ばかりみちゃう

下海孝誠

ラーメン屋さん

花岡くんはそのラーメン屋の前を通った時、足が止まった。そこのラーメン屋はすごく美味しいのだが、高いのだ。高いと言っも、もしかしたら、世間的には普通なのか分からないが、950円である。

それにはそれ相応の価値があって、うまいことと、すごく大きい角煮が入っているのだ。

花岡くんが最初驚いたのは、まず、普通にチャーシューも乗っているのだが、箸を入れた時、ガツンとぶつかったのが、沈んでいた角煮だった。

つまり、チャーシューもボリューミーなのだが、更に角煮も入っている、まさにラーメンという海を漂流していたら、肉の岩にもぶつかってしまうほど、良い意味での操縦不能な感動を覚えたのだった。


今日、昼時にその店の前で足が止まった時、なんと、ランチは750円との事だった。花岡くんは迷わずすぐと入った。なぜなら、うまいけど高いから躊躇していたのに、あのクオリティで750円ともなれば、夢のような話である。


食券を渡してワクワクする思いで待っていると、程なくしてラーメンが目の前に運ばれてきた。ここは、とんこつと、カツオがあるのだが、今日の花岡くんはカツオにした。


ところがなのである。チャーシューは乗っているのだが、いくら箸で捜索しても角煮は入っていなかった。


なるほど!ランチとはそういう意味だったのだ。

すこし軽めで廉価なラーメンで、ここの旨さを知ってもらいたいという趣旨なのか。


しかし、花岡くんは、「そうだよなぁ。そんなに良い話はないよなぁ。まあ、当然だよなぁ。」と落胆しつつも、ラーメン自体は相変わらずの旨さであったので、腹鼓をうちつつ、つぶやくのであった。


「また、夢をみちゃったな。」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る