『来る』 怨霊界のジョン・ウィック

 第22回日本ホラー小説大賞受賞作『ぼぎわんが、来る』の、『下妻物語』『告白』中島哲也による映画。


 子供の頃におさななじみを連れ去った怪物に怯えるイクメン男性と、その家族たちの苦悩。



 作者いわく、作中のおばけ「ぼぎわん」とは、宣教師が『ブギーマン』と呼ぶ存在が日本人のなまりで伝わったもの、という。


 スティーブン・キングばりのヤバいモンスターによって、家族は幸せを奪われる。

 なんとかしようと素人霊媒師を雇う。

 だが、彼女の不注意によって、事態は深刻化してしまう。





 第一章は父親による家庭の栄光と崩壊が描かれる。

 一章ラストは、このクリーチャーの頭の良さが描かれていて非情に厄介な相手として描写される。


 第二章の母親による証言で、家庭の実情が明かされる。


 本番は第三章だ。

 

 ついに、目当ての人物を手に入れたモンスター。


 それを打ち砕くために、一章に登場した素人霊媒師の姉が参戦!

 彼女の手によって、日本全国からエクソシズム・除霊のプロフェショナルが集められた!


 神道、仏教、ギャル巫女、果てはインチキ呼ばわりされていた霊媒師まで!

 しかも、彼らは警察などの国家権力からちゃんと許可をもらってから呼ばれているのだ!

 ジョン・ウィックかな?


 さらに、それだけ集められたとしても、「半分しか集められませんでした」とヒロインは語る。

 大半は、移動途中で殺されたという。

 

 新幹線で神主たちが別々の駅で降りて、「一人くらいはたどり着けるやろう」とこぼすあたりが凄くリアルだ。

 カプセルホテルで着替えているシーンも、印象的である。


 海外映画のような大規模作戦が展開されるさまは、日本得意のおどろおどろしさを織り交ぜつつ、その発展形を思わせてくれた。


「ぼぎわん」の正体については語られず、

「どうして主人公たちの前に現れたのかはわからない。しかし、どうすればいいかわかる」

 と匂わせる程度。


 オレも原作ネタバレ考察でわかった程度である。


 しかし、けっしてまったく語られていなかったわけではない。

「ああ、こういう存在だったのかも」

 と思わせる描写は幾度も出てくる。

 そりゃあ、こういう家に来るよね、という存在らしい。



 注目すべきは、霊媒師姉妹の存在。


 妹の設定はキャバ嬢で、初登場は下着姿だったり。

 あんなナリで子どもに優しかったり責任感が強かったりと、ギャップに萌える。


 姉は妹を「無能」「馬鹿な子」と散々罵るのだが、「危険な相手に関わってほしくない」という感情も併せ持つ、実はツンデレだったりする。



 あと、なんでジョン・ウィックを引き合いに出したかというと、本作の敵「ぼぎわん」は、ブギーマンという海外の怨霊がモデルとなっている。


 ブギーマンの通称は、「ババヤガ」だ。

 これは、ジョン・ウィックのあだ名でもある。


 つまり、ぼぎわんは怨霊界のジョン・ウィックと言えるのだ。


 名だたる霊能力者を次々と手に掛けるあの職人芸は、ジョン・ウィック並の戦闘力と言えよう。

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