『復讐するは我にあり』 遠回しな父殺し

 実在した「西口彰事件」を元に描かれた佐木隆三の小説を、映画化。



 緒形拳扮する主人公は、知り合いの集金人と運転手を殺害し、現金を奪って逃走した。


 その後、弁護士を殺害してなりすまし、浜松の旅館の女将といい関係になって、潜伏を始める。



 

 タイトルの意味は、「我」とは「神」のことだそうだ。

「悪を滅ぼすのは、神だけに許された特権」

 という意味らしい。


 実際、主人公の実家もクリスチャン家系である。

 悪ガキだった主人公は更生のため、宗教系学校に通っていた。

 が、相変わらず問題ばかり起こていたという。

 


 西口事件に寄ると、借金返済のための犯行だったという。


 だが、本作ではどうだろうか。

 


 主人公には妻子がいた。

 しかしお見合いで愛情がなく、主人公の素行不良に頭を抱えていた様子だ。


 むしろ主人公の父親と睦まじかった。

 肉体関係すらあった描写もある。

 心はすでに、父親の方へ傾いていたらしい。


 主人公は昔から、父親に対してコンプレックスを抱えていた。

 数々の悪行も、父へのあてつけかと思わせるほどである。


 正体が殺人鬼だと女将にバレて、清川虹子扮する女将の母親は、競艇で当てた金を渡して主人公に出ていってもらおうとする。


 会話中、

「本当に殺したいやつを、殺せてないのでは?」

 と、主人公は図星をつかれる。


 作中でも、「本当に殺したい相手」について、主人公が苛立つシーンが随所に見られる。

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