5月18日 近況 ダンスその後、漫画原作の仕事

2021年5月18日


 コロナで緊急事態宣言がまた出たのは4月の終わりの週だったか。俺もびいも実は世間がコロナ禍のことを忘れていた。


 無茶な話だが、日本から出られなくなり、そのうちにもはや、なぜ日本にいないといけないのか、わからなくなってた。漫画原作の前は実は、書いたかもしれんがダンスのプロジェクトで、それは結局、半分は流れた。


 女子中高生の出演となると、たとえ保護者の同意のサインしっかりと書面で取り付けていても、いろいろと細かいことが出てきて、難しい。ものすごく良い条件が整っている今回でこれでは、厳しいものがあった。あまりに上手すぎるプロのような踊りの出来栄えに喜んでしまった分、結局、いろいろあり、プロジェクトが流れてしまったびいの落ち込み具合はひどくて、混乱を巻き起こした。


 しっかりしていると身内に思われていたはずのびいが、駅で号泣して、バスでも号泣して、道路に飛び出したりもするしで、正直、俺は「これは精神病院に入院かもしれない」と密かにびいのお母さんと話し合ったりした。俺の手に負えないかもしれない、と。見ていないところで無茶苦茶するようなら、それはマズすぎる。屋上から飛び降りるとか、踏切の下をくぐるとか、しそうなくらいに危なかった。


 プロジェクトがうまくいっていた一ヶ月の間、びいは「明るくてキラキラしている可愛い子たち」に踊ってもらって、それを皆さんに見てもらって、元気を出してもらうんだ、と言っていた。急にぱああ、っと明るくなったような異次元にガラス越しに魅入られた子どものように、釘付けになり、生きる世界がこれほどまでに違うなんて、と、涙を浮かべんばかりに眺め、張り切っていた。なのに。


 その落ち込み具合はひどく、何を言っても、もうダメだった。正月が開けるのと同時だったんじゃないか。やはりやめておきます、となったのは。その理由が、プロジェクトが大きくなりすぎて、本格的になりそうで怖い、というものであったため、びいは納得がいかないようだった。自分たちは別にアイドルになりたいわけじゃない、反響があったら怖い、と。劇団に属してるのに? と俺もびいも思ったが、全員というわけでもないし、属していればいたで、今度はそちらに仁義を通さねばならなくなる。砂を噛むようだった。


 そんなこんなの時、次にたまたまやってきた漫画の仕事は、すごく良かった。びいと相性の良い仕事相手ということも知っていた。自由度が高く、報酬が太っ腹で。自分のクリエイティビティが買われたと喜んだびいも頑張って、昼夜がなくなるほど没頭し、俺が土日休み、朝10時から日没17時までしか作業してはいけない、と最初に決めさせてもらい、一見は、上手くいくかのように見えた。


 30日。すごかった。何がすごかったかというと、魔物だ。俺が気付いた時には、魔物がジャンジャン飛んできてた。いつからだったんだろう?

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