第110話 急転直下に。
I先生に実家のことを相談していたが、先生の答えは全て「煩わしいこと、不動産、実家の会社の問題は全て他人に任せ、お前は本業のことだけ考えろ」というものだった。
突然に電話で知らされたのは、俺が泥だらけになりながら、庭で、泉のように溢れる水を一人で真夜中、掻き出していた5月。そこからあれよあれよという間に、俺らの代で会社を閉めるとなると、祖父に申し訳ない、と俺はギリギリした日を過ごしていた。
あれもこれも、計画が狂っている中の、実家の問題。Bと。
俺は、全ての読みが甘かった。やはりこの物件は鬼門だったか、と未来を読むことの恐ろしさについて、自分じゃどうにもできないとI先生に相談した。
俺はできる限りのことをしたが、この家自体が、呪われた家のように、最初、俺はこの家から叩き出されるような、そういう苦痛の中で手入れしていた。
ゲジゲジが俺の目の前にだけジャンピングで迫ってきたり、この古いお化け屋敷のような洋館は、できるだけ俺を追い出そう、と。
俺は精神的に追い詰められていたが、なんとかここまできて、2年。やっと人が住める状態にまで持ってきた。俺には野望があったが、馬鹿げてる。中世とか、そんなふうに優雅な時代じゃないからな。
そうこうしているうちの実家の問題。それから、なんと母さんがさっき電話で突然言った。
「……岬、あなたの日本のマンション、買いたいという人が連絡してきたんだけど、売る?」
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