くつした

もぞもぞとうごめ

何か小さい動物?虫?

近づいていくとそれはくつしただった


彼は伸び上がり私に丁寧にお辞儀する


彼は私が彼を捨てられなかったことに対して

お礼を言っているようだった


それは元カレのくつしただった


部屋に残された彼を処分することが出来ずに

窓際に置いておいたから

風にあおられて床の上へ


もぞもぞとうごめ

そのくつしたを

私はかわいいと思い始めていた


「ずっと一緒にいようね」


彼を抱きしめて一緒に眠る

不思議と体温まで感じられるようだ

温かな彼を握りしめ毎夜眠る


もうずっと離さない


そう思っていたのに


新しい恋人ができたら

ただの布切れになった


「さよなら」


彼は最後の力を振り絞って

ごみ箱へと飛び込んだ

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