女が好きで、何が悪いッ!?

夕焼けに憧れる本の虫

準備はOK?


 「そう。もう、めっちゃびっくりしてさ〜」


 楽しげに話し、時折私を見上げて笑う彼女につられて笑いつつも、話が全く入ってこない。


「……って、聞いてる?」


「えっ? あ、聞いてるに決まってんじゃん!」


「怪しいなー。でね、その先輩が……」


 かーわいい。

 昔からのちっこい背も、最近パーマをかけたらしいくるくるの髪も、柔らかそうなほっぺただって。


 はーーーー、キスしたい。


 いや、ね?

 うん。さすがに分かってるよ?

 私だって、街中でキスできるほどの甘々ちゃんじゃないし、そもそも、女の子同士だしね。

 なかなか人には見せられないとゆーか。

 あ、まぁそれは性別関係ないか。


「ねぇ、あのお店入ってみない?」


「あ、うん」


 前をてくてく歩くその様子だって、感情的に見えて案外ロジカルな思考だって、同じ20とは思えないちっさい手だって。


「かわいい」


「あ、ほんとだ。ガラス細工?」


 『お前だよ、ばーか』なんて心の中で呟きつつ、私は彼女が指さすカエルくんを見る。


 はー、みにくいやつめ。

 カエルのくせに、奴の視線を独り占めとはのう。


「あ、ほらこれもこれも!」


 きれー。と感嘆の声を上げながらディスプレイを眺める彼女。

 邪魔になったのか、前よりは随分伸びた髪を左側でまとめ始めた。


 うん、目の毒をありがとう。


 なんだよ食われてーのかこら。

 ご希望ならば今すぐにでも?

 こちとら準備は万端でい。


「ねぇ、あそこのお店もかわいい!」


 くい、と右手を引かれ、びっくりして肩が跳ねる。

 我ながら純粋かよ。絶対純粋じゃないけど。


 今日は『遊び』に来てるだけだもんなぁ。

 別に、即ベッドインしたい訳じゃないけど、ちょっとくらい……いや、そこそこイチャイチャしたいって思うのは普通だよね?


「ほら、これこれ。絶対似合うよ〜」


「え?」


 小さく背伸びをして私の首元にネックレスをあてがう彼女。


 ……ほらもー。


「やっぱり! 似合ってる!」


 そっと私から離れ、微笑む彼女。

 飾りのハートが、私を煽るように瞬いた。


「ありがと」


 ねー、あのさぁ。


 やっぱり、キスしても良いですか?

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