第2話最悪の出会い
「さあ、出発だ」
俺は柄にもなく興奮したような声でそう言った。周りから、隊長どうしたんだ?と怪訝そうな声が聞こえてくる。5年ごしの復讐を果たせる機会を与えられたのだから、仕方ないだろと後ろに声をかけ、馬を出発させた。
万事順調に事は進み、とうとう王国の首都の近くまでたどり着いた。
ここから俺たちの隊は、少数で城に潜入し、王族達を叩き潰すという任務を与えられていたため、他の部隊とは別行動となった。
俺たちの部隊は10人と少数ではあったが、それだけ腕に自信のあるやつらが集まっていたため、さほど心配はしていなかった。
味方のスパイが調べてよこした城の地図を元にして考えた侵入経路は、単純明快、正門から堂々と入って行くというものであった。この国は他国から攻め入られたことがあまりなかったせいか、警備は驚くほどに手薄であった。
「行くぞ」
俺は後ろのやつらに声をかけ、城内のエントランスに侵入したはずだった。しかし、そこには警備どころかひとっこひとり居なかった。
嫌な予感がよぎり、退却を命じようとしたそのとき、扉が閉まる嫌な音と共に正面の階段に約10人ほどの敵が現れた。その真ん中にいる隊長と思われるやつが嫌味な笑いを浮かべる。
「残念でした」
同時に周りのやつらが動き出した。同じ人数ならば、負けることはない…はずだった。しかし、俺の打算はむなしく砕け散った。やつらの剣術は俺たちより数段上で、仲間が次々と倒されていく。俺が仲間の一人に応戦しようと構えたとき、先ほど声を発したやつが俺の正面に周りこんできた。
「おまえの相手はこの俺だ!!光栄に思え!」
彼は完璧な笑みを浮かべて言った。俺はこいつの面を叩き斬ってやりたいという衝動に駆られ、剣をふったが、彼は軽々とそれをよけ、
「おっと、速いじゃねーか、少しは楽しませてくれそうだ!!」
と言った。彼の表情から少しだけ余裕が消えたことに内心ほっとし、これから残った仲間をどう逃がそうかと考えを巡らせていると、彼の刃が頬をかすめた。彼は余所見するんじゃねーというように口元を歪め、俺を追い詰めてくる。気付けば俺の仲間は一人として生き残っておらず、俺は敵に囲まれていた。
その後、敢えなく敵に捕まり、武器も取り上げられ両腕を拘束され地に膝をつけさせられた。
もう逃げられない。こうなったとき俺にはもう、1つの道しか残されていなかった。口を割る前に死ぬこと。それを軍に教えられたときは使うことのない知識だと思っていたが、案外早くその機会がきたもんだと俺は自嘲に口元を歪めながら、舌を噛みきろうと歯を浮かせた刹那、彼に顎を強く掴まれた。
「俺の許可なしに死ねると思ってるのか?」
彼の何もかも見透かしたような真っ青な瞳が金髪に揺れながら、こちらを見下ろしていた。
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