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半ば誘拐するようにして、俺達により修道院へと押し込められた妹。トラビダは当初こそ暴れ狂ったり、俺を闇討ちにして殺そうなどとしてきていた。だが子ども達の無邪気さに、触れ合う人々の優しさに、俺の強さの意味に、光に生きる人の営みに触れ、あっという間にその「毒気」を失っていった。人は生来「正」の流れに生きる物。一度光の尊さを知れば、どんな暗闇に鎖されようとも光を探さずにいられない――それを、俺はこの生を以て実感してきた。妹から「兄貴」と呼ばれたその初めての日を、俺は生涯忘れないだろう。この世に生を受け三十と余年。俺は漸く、この命に生き甲斐を見いだすことができたような気がする。武道を究め、愛を育み、心を通わせ、その感動を後世の者達に伝えていく、「幸せ」。この身一つでそれら幸福をすべてを叶えるこの身の、この生のなんと満ち足りたことか。これをこそ「希望」と呼ぶのだろうと、俺はそう考えていた。この命を賭けて守る価値のあるものだと、本気で思えた。リシディアと魔女の戦争は、日増しに激しくなっていっていたようだった。バジラノの国境付近に存在するこの村は、常に歴史の戦火に飲まれる危険に晒されてきた。有事に備え、バジラノの役人とは密に連絡を取りつつ、神父カルマンの友人だというリシディアの騎士に手紙を出し、我らのような国境の村が戦禍を被ることがないよう訴えを出し続けていた。何があろうとも、この村を、皆を、子ども達を、トラビダを、サニーを――――そう遠くない未来生まれてくる我が子を、守らなければならない破滅は訪れた。「魔女がリシディアの王女を殺した」。その衝撃の報道を俺も目の当たりにした一人だった。魔女とリシディアが講和を結ぶ、双方が長年願って止まなかった筈のその調印式の最中、魔女王タビアはリシディア第一王女、最も強くこの講和を推し進めていたヴィリカティヒ・セラ・リシディアの首を刎ねたのだ。全国に生中継されていたその光景に、俺達は揃ってわが目を疑った。魔女とリシディアは互いに戦いで疲れ切り、講和は互いが望んでやまないものだった筈だ。それを何故――何故だ? 何故あのような愚かで、畜生で、人とも思えぬ裏切りをいとも容易く行うことができる? 俺は心底魔女という生き物を軽蔑した。同じ光を求め生きる命だとは到底思えぬ鬼畜の所業――――無論リシディアは大激怒し、血の式典から数時間のちには、リシディアと魔女の国マギアは過去類を見ない程の激しさを伴った全面戦争へと突入していた。統制される情報、人と物の行き来、感情。戦争の起こりを敏感に感じた。俺達は早々にバジラノ本国中央への退避を決めた。この混乱に乗じ、治安維持の名目でアッカス帝国もリシディアに侵攻しようと動き始めたという。あのハイエナ共め、周辺小国を食い物にし続けるだけではまだ足りんか――村を挟む両国が互いにざわつき始め、乱れ始めたバジラノ中央との連携に焦りを感じ始めていた時、彼らは訪れた。村ではお目にかかることの無い煌びやかな鎧を着たその集団を、カルマン神父は大手を振って迎え入れた。神父の友人だという、リシディアの騎士だろう。彼らが避難を手伝ってくれるというならありがたい刺された刺された刺された刺された刺された刺された刺された刺された刺された刺された刺された刺された刺された刺された刺された刺された刺された刺された刺された刺された。



 俺は刺された。

 前後左右上下全方位から刺され刺され、刺された。



 皆が拘束されていく。

 男はみなさされている。



 「この村に魔女がいる疑いがある」?

 「魔女でないか確認する必要がある」?




 なんの、はなしを、している、のだ、きさまらは。

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