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「ッ、だから違法じゃないって何度も言ってんだわよこっちはッ!!! なんなのあんたたちマジで、そんなこと言いにここまで――」

「違法に決まってんだろうがこんな不快なマンガッ! 男と男でレンアイ~とかありえねーっつーの! 人類がどうやって増えてきたか知らねぇの??」

すみっこだからいいと思ったのかなぁ、バカだなぁ君~。こんなの描いてるからそんな低能なんだよ?」

「死ね!!」

「ハイ論破ろんぱ~、反論できないし届かないしで悔しいでちゅね~~~~――



 ――――ぇん?」



 ――拘束された男子生徒の目と鼻の先で、巨大な拳が地面にめり込む。



 自分の顔に影差した丸太のような太い腕をゆっくり見上げる男子生徒。

 その先には顔面を怒りで煮えたぎらせた――ビージ・バディルオンの姿があった。



「――言いたいことはそれで全部か? 貴様等」

「で――――出た風紀委員会ふうきいいんかいのデカブツ」

「全部かって聞いてんだ」

「……!!」



 ビージのつかみ取った床の欠片が、そのまま握りくだかれる。男子生徒は口をつぐんで押し黙った。

 テインツは無言のままもう一人の男子生徒の背を片手でつかむと無理矢理立たせ、突き飛ばして前へ歩けとうながす。

 男子は殺意さえ垣間見かいまみえる鋭い視線を、肩越しにテインツへと送った。

 テインツは同様の眼差しを返そうとして――――



〝それとも何かしら。あんた達・・・・は、まだそういうの・・・・・から抜け出せてないってことなのかしらね〟

〝風紀委員会、変わらなくちゃいけない〟



 ――込み上がってきた空気と怒気をのどもとに留めて目を閉じ――――つとめて目尻めじりを下げ、目を開けた。



「……いつまでもそうやって力と権力タテにして支配者ぶってろ、落ち目貴族共が。どうなるか今に見てろよカスがよ」

「貴様まだ言うかッ!」

「ビージ。いい、僕がやる……ああそうだろう。確かに貴族は落ち目だ」

「テインツ!」

「けど、それと今回の件とは何の関係も無い。このマンガは……」



 テインツが見本誌を拾い上げ、ホコリをはたき――――シータの前、模擬店もぎてんのカウンターにそっと置いた。



「学祭からの許可を得て販売はんばいしている、れっきとした彼女らの作品だ」

「!……あんた、」

「お前達はそれを足でみにじろうとした、外なら犯罪で捕まるところだ。当たり前のことをいちいち確認させるな」

「テメェ中身見たのかよ? 見もせずに言ってるわけじゃねぇよな、あぁ?」

「もちろん。過激ではあるけど、いわゆる一線を越えたものは無い」

「それが不快だって言ってんだよこっちは。あ? 学校でやんなよそういうのを。聞いてんのかオイッ!!」

『!!』

「一般生徒を恫喝どうかつするなッ!」

「ハイ今のあんたも恫喝ゥ! オドしやめて風紀名乗らないで~」

「テメーは黙ってろ!」

「いつまでも夢見てんじゃねーぞカス風紀。テメーらの強権きょうけんゴリ押しが通用する時代なんてとっくに――」

「話をらすな。今僕らの話はしてない」

「あ?」

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