10
「いい加減気付くんだ、マリスタ。お前は私とエマの娘、栄えあるアルテアス家の次期当主を担う身だ。大いなる力には大いなる責任が伴う。お前が今後成すべきことは、負うべき大いなるものはいち
「…………」
……いつの間にか、のどはカラカラだった。
まるで父さんが、私の中の水を全て吸い取ってしまったかのよう。
父さんはいつもの調子だった。
私にはなんだかよく分からない
私は一度だって父さんに自分の主張を認めてもらったことは無かったし、その説教を正しく聞けたこともなかったと思う。そして、のどもと過ぎればそんなことはどうでもいいやと感じるように、いつもなっていた。
でも――――でも、何が変わったんだろう。
今日は、
〝どうせそんな考え方なんて、一度だってしたことないんでしょ!? 井の中の
今日は――なんだか少しだけ、ちゃんと頭に入ってくる。
「それは違う」って、心がちゃんと叫んでる――――!
「……すごいね。父さんは」
「!……マリスタ……?」
「……?」
父さんが、細く長い
「ちゃんと
「……我々はリシディアを、この国の法を定めてきた側の人間だ。法は国の
「…………ごめん、ちょっとよく分かんないとこあったけど、うん。大体わかった。そういう大きい視点を持った父さんを、今は素直にすごいと思う」
「解ったなら――」
「でもね、父さん。私はそれ、違うと思うの」
「――……」
探るような目で、父さんが私を見る。
同じくらい真面目な目で、私も父さんを見返した。
父さんの瞳は、いつもと変わらない緑色だった。
「や、違うっていうか……そればっかりじゃだめだな、っていうか。もちろん、そういう目も必要だとは、思うんだよ? でもね、そうやって大きな流れを作る中で……たぶん、たくさんの
「……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます