第66話 ナイフ

ぶすりと鈍い音を立て

言葉のナイフは胸を刺す

流れ落ちてくる赤い血は

冷えた指先を温めて

もう涙さえ零せない

カラカラに渇いた瞳で

毎晩毎晩死んでいく

私の亡骸を見ている


いつしか殺されることに

この体は慣れてしまった

それでも呪いのような言葉は

まだまだ刃を突き立てる

刺されるごとに死んでいく

私をどうか抱き止めて

せめてこの血のぬくもりを

肌で感じていたいから


ぶすりと鈍い音を立て

言葉のナイフは胸を刺す

それを受け止めることだけが

あなたへの愛になるのなら

笑ってこの体差し出し

拙い愛を伝えよう

いつだって私がほしいのは

あなたの笑顔だけだから

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る