第14話 夜のホームで

自分の駅をすっ飛ばす急行で

あえて向かった山の駅

途中の窓から見える夜景が

まるで宝石をぶちまけたみたいで

心に染み付くどろどろが

一気に消えていく気がした


しんと冷えた駅の中には

もう誰の姿もなくて

たった一人でホームの端の

木で出来たベンチに座る

物音ひとつしなくても

寂しいとは思わなくて

ただその静けさに身を委ね

体を夜へと解放する


視界の端にはさっき見た

宝石の欠片たち

ああこの手で触れられたら、と

闇の中に手を伸ばすけど

その手はもちろん空を切り

吸い込んだ風から夜の匂いがした

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