第11話 空と色

空に浮かぶ白い月が

静かにこちらを見下ろして

真昼の街の喧騒が

遠くの青に吸い込まれる


呼ぶ声は

さらに遠くて


止まらない時の流れが

いつしか現実を追い越して

隅にうずくまったままの

背中をするりと撫でていく


取り残されたのは

一体誰?


長く伸び始めた影が

徐々に輪郭を滲ませて

広がるオレンジの海に

心はゆるゆる溶けていく


この情景だけが

瞼に強く焼き付いて

ほんの少しの寂しさは

淡く群青の空に消えた


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