アウトメディア

 9月25日火曜日、診察の日。

 10時半からの予約でしたが、やはり10分近く遅く病院に到着してしまいました。

 11時台なら何とかなるところですが、10時台だと、どうしても起きるのに時間がかかってしまうようです。ただ、前の診察日のように歩くのもままならないくらい具合が悪い、ということはなく、台風の後で天気はぐずついていましたが、前回よりは未だマシのように見えました。

 昼ご飯から渋々と学校へも行きました。


 10月の初めには中間テストと地区中学校音楽会、10月末には合唱コンクールがあり、学校内は慌ただしくなっていました。

 5校時、6校時に出席出来たとしても、授業には出ないため、自習のことが多いらしく、出来るならば行きたくないという言葉を、次女はよく口にします。気持ちは分かるけれど、そういう問題ではないと、切々と説いていくしかありません。

「本当に高校入りたいの?」

 言うと黙ってしまいます。

 受験勉強、もう始めていなければ絶対に追いつけないのに、全然実感が無いのか、アニメ三昧、ゲーム三昧、さらにはお絵かきにLINEに。自分で制御しようという気持ちが無いのです。


 そんなときです。

 iOSのアップデートがあり、早速実行したところ、スクリーンタイムなる機能が!

 ファミリーの管理者を夫から私に変更していたことで、子どものiPhone、iPod touchの使用時間制限を行えるようになっていました。それに、何時間何分何秒使用していたのか、管理者側で把握出来るようになっていました。

 ――これだ、と思いました。

 自分で制御出来ないなら、私が制御するしかない。

 それまでも、Wi-Fiを4時半から22時半までしか使えないようにしていましたが、それ以外は自由でした。そのため、朝目が覚めると直ぐにiPodをいじり、夜眠くなるまでずっと触りっぱなしという最悪の状態が続いて、睡眠を妨害していました。

 本人は夜中使用していないのだと言っていましたが、それにしたって、夜、Wi-Fiが切れる寸前までブラウザゲーム、何時間となく通話、LINE、デジタルじゃないと描けないからと、お絵かきアプリで朝から晩までという具合です。

 身体の自由が利かないからと、自分に言い訳をしてデジタル機器を使いたい放題では、とてもじゃないけれど、治る病気も治らないのではないかと、本人に言いました。

 うちには、もっと小さな子たちが沢山いるため、一人、そうやって電子機器をいじる人がいると、自分も自分もと、ひとりひとり「やりたいやりたい」と騒ぎ出すのです。

 強硬手段として、利用時間の制限をするしかない。


 今まで自由に遊ばせていたiPod touchを、夜9時以降触れないようにしました。

 LINEなど、アプリの制限時間を一日3時間までにしました。


 それまでの次女の利用時間は、平日でも6時間以上。起きている間はほとんど触りっぱなしでした。

 これを制限するしかないと、心に決めました。

 本来なら、本人の承諾を得て、本人とよく相談した上でやるべきだということはわかっていました。

 中学校でもアウトメディアを推進し、夜9時以降メディア機器を触らないなど、約束をしているはずでした。

 まるでメディア機器依存症のような状態(本人は強く否定しましたが)だと思いました。


「もし、高校進学を諦めるなら、直ぐにでも職場に復帰するよう言うからね。本当に高校に進学したいなら、ある程度我慢すること、自分でコントロールして、なるべく勉強の時間を確保することが出来ないといけない。本気で高校に行く気あるの? それとも行かないの?」


 次女は目を落として、なるべく私と目を合わせないようにしていましたし、私もうさぎのケージを掃除しながら、淡々と言いました。


「これから先、色んな道があるけれど。一つは、高校に進学する道。きちんと体調を戻して、受験に合格して高校生になる。二つ目は、通信制高校に入る。通信制と言っても、通学型になるから、指定された回数、3駅向こうのキャンパスまで1時間近くかけて通うことになる。三つ目は、今の進学を諦める。諦めて後日高卒認定試験を受けるか、体調が元に戻って、大人になってから高校に入る。――どれを選ぶ? もし、今高校に入る気が無いなら、お金も無いんだし、直ぐにでも仕事に復帰するよ」


 次女はベッドの上で、かなりふてくされていました。

 けれど、だからといって引き下がるわけには行きませんでした。

 結局、渋々と決定を受け入れた形になりました。


 その後、メモや睡眠管理アプリ、音楽や写真、天気のアプリなどは、常に許可することにし、依存度の高いアプリを時間制限ありで使わせるようにしました。

 今まで見放題だったiPod touchも、流石に秒単位で使用時間をカウントされるとあれば、節約するしかありません。

「ガッティーナとの連絡が出来なくなるじゃん」

 とぶつくさ言っていましたが、

「向こうにも言って、早い時間に連絡し合えば良いじゃん」

 と伝えました。


 今のところですが、少しずつ制限時間内だけで使うよう、気をつけるようになってきているようです。

 こうでもしなければ、いわゆるメディア漬けから脱することの出来ないのが、現代っ子の現状なのです。

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