介護休業と介護休暇

 要介護状態にある家族を介護することになったとき、休業することができます。

 また、一年に5日の範囲内で、時間単位でも所得出来る介護休暇制度などがあります。


 と、このようなことが、『ワーク・ライフ・バランス ガイドブック』なるものに書かれていました。

 厳密に言うと、私が今所得しているのは介護休業、ということになるようです。


 要介護の状態とは何かというと、『負傷・疾病又は身体上若しくは精神上の障害により2週間以上の期間にわたり日常生活を営むのに支障がある場合をいいます』とのこと。

 対象となる家族は、配偶者、父母・子、配偶者の父母、同居している祖父母・兄弟姉妹・配偶者の父母の配偶者・子の配偶者・配偶者の子及び孫だそうです。


 介護休業は6ヶ月の期間の範囲内で取得出来ます。6ヶ月の介護休業終了後も、引き続き要介護状態にある家族の介護を行わなければならない特別な事情があると会社が認めるときには、再度の介護休業(6ヶ月以内)が可能です。

 介護休業に伴う給付金は、一定の要件を満たすと申し出により、雇用保険から介護休業給付金の支給を受けることが出来ます。


【介護休業開始時賃金日額(介護休業開始前6ヶ月の賃金を180で除した額)】×【支給日数】×【40%】


 介護休業給付金は、最大3ヶ月分支給されます。


 介護部分休業は、同じように6ヶ月の範囲内で1時間を単位として、一定期間連続して又は断続して休業する制度です。


 どちらも無給。

 つまり、賃金は会社から支払われないことになります。


 これまで育児休業で5回ほど休みましたが、そちらの支給額は、最初の半年が67%、残り半年が50%の一年分支給されていましたので、介護休業はかなり金銭的に厳しい条件となります。(最初の何人目かは、これよりも低い支給条件でしたが、近年改善されました)

 うちには食べ盛り、育ち盛りの子どもが5人居りますので、どうしてもお金の問題はネックでした。

 特に長女は大学進学を考えていまして、将来保育士と幼稚園教諭の免許を取りたいという具体的な目標もありました。そのためにも、四年制大学には入れてあげたいし、それが免許所得に一番の近道なのも、よくわかっていました。


 夫とは、チームリーダーからの進言があるより前に、やはりこのままではと話をしていて、どうにか休みを取るなりして対応出来ないものか相談していました。しかし、現実問題として、生活が成り立つか成り立たないかと言うところに話が及ぶと、お互い黙ってしまうのでした。

 学校側から、年度内で送迎終了を告げられたあとは、特に悩みました。

 次女が自分の意思で起き、ご飯を食べ、歩いて行くという難題を、毎日クリア出来るのかどうか。様子を見る限り、とても出来そうには見えませんでした。学校からの支援がなくなったら、恐らく自分で毎日歩いて行くのは困難でしょう。夕方の送迎を続けるにしても限界がありますし、このままズルズルと夕方ばかり学校へ連れて行けばどうにかなるのかと聞かれたら、それは違うだろうと言われるのは、目に見えていました。


 夫の会社でもそういう休業、休暇が取れるのかどうか相談して貰い、とにかくどちらかがどうにかするとなんとなくは考えていました。

 ただ、次女も年頃ですし、着替えや歩行の補助などで身体を触る機会が多いことを考えると、父親よりは母親の方が本人の心理的負担が少ないだろうなというのは、考えずとも分かることでした。


 県立病院で先生に尋ねると、

「診断書は出そうと思えばいつでも出せますよ。ただ、実際その内容で休めるのかどうかは、会社の方でどう捉えるのかで変わってくると思いますから、そこだけはご理解お願いします」

 とのこと。

 起立性調節障害は、いずれ治るとはいえ、いつ治るのかハッキリ分からない病気。更に、見た目には全く障害が見えない上、時間帯によっては、介助は殆ど必要ありません。朝から昼にかけて、そして、長い時間歩く場合など、本人が出来ないところで助けるという具合で、つきっきりである必要もありません。

 選択肢のひとつとしては可能性はあるなと思いながらも、これは本当に介護が必要な状態と判断されるのだろうかというのがとにかく不安でなりませんでした。

 時間単位で所得するにしても、例えば、いつ起きることが出来るのか、いつ学校へ歩いて行けるのかなど、体調によってその時間はまちまちです。そういった意味でも、お年寄りの介護とは全く種類の違う介護が必要なのだということを、会社なり職場の上司なりがどのくらい理解してくれるのか、全く分からない状態でした。


 また、私たち夫婦だけではなく、例えば祖父母の支援は受けられないのかということも、学校や会社の上司から聞かれたことがありました。

 以前は、「今、介護が必要な年寄りがいるので」と話していましたが、祖母が亡くなっても私の両親からの支援は先ず見込めません。実家は跡継ぎのいない農家で、夫婦二人で田んぼから畑から、花から、ほぼ一年中働き通しなのです。私の家まで片道30分近くかけて毎日通って手伝ってくれとは当然言えません。農業機械のローンもありますし、未だ年金も貰っていません。生活がかかっているのです。

 夫の両親は二つ隣の県に住んでいて、遠すぎて何も頼むことは出来ない状態。


 私たち二人で、どうやって次女を支えていくか考えたとき、介護休業は本当の、最終手段だったわけです。

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