にっちもさっちも

 一通りの日程を終えて、おときの時間。

 なかなか普段合わない親戚の方々にも酒をついで歩きます。

 父方の叔母さんもいらっしゃっていて、何年ぶりかにお会いしました。

「次女ちゃん、学校行ってないんだって?」

 どうやら父に聞いていたらしく、相当心配されました。

「そうなんです。起立性調節障害というのにかかって」

「でも、見た限り思ったより元気そうで安心した」

「ですね。朝は起こすの大変ですけど、この時間になると何ともないので」

 全部の日程を終えて、料理に舌鼓を打ち、姉弟と楽しそうに喋る姿は、健常者と何ら変わりません。

「医者は? 行ってるの?」

「あ……、はい。小児科と心療内科に。来月からは、県立病院の方で診て貰えそうです」

「そっか。ならいいけど。兄が大変だ大変だ言うから、どんな感じか心配してたんだ」

 ――見た目には、極端に病的ではないのがこの病気の特徴です。しかし、明らかに他の姉弟より痩せ細っています。ここしばらく身長は伸びているのに体重は増えないのは心配でした。

「あんたも倒れないようにね」

 最後に念を押されました。

 綱渡りなのを、叔母さんも察してくれたようでした。


 翌日1月29日月曜日は、疲れたのか、13時半前くらいに起きた次女。

 学校から14時半に迎えだったのですが、私も昼休みが取れず連絡が遅れ、結局迎えが来たのにご飯も食べてないから行くことができませんと、先生にお帰りいただく事態になりました。

 休むタイミングを見失い、昼休みが15時半頃になってしまった私は、葬式疲れもあってぐったりしていました。

 窓口担当のパートさんが、お母さんが倒れたと介護のためしばらく休むことになったと聞かされたのは、その日の朝。人員のやりくりを考えた結果、私がその方の担務につくことに。お客さんとの約束もあって、いつ休めば良いのかと思っているうちにずるずると昼休みがずれ込んだのでした。

「かなりキツいけど、仕方ないですよね。状況が状況だけに」

 私も自分の子供のことで急に休むことが多々あるため、誰かが急に休むと言うことはよくあることなのだと分かっていました。

 必要とされることは良いことだし、少しでも役に立てるならその方が良いはずです。

 しかし、慣れない担務に普段より多くの疲労を感じました。


 1月も終わりの31日水曜日は、授業参観のために休みを取っていました。

 県立病院から数日前に「来月から診察大丈夫ですよ」と連絡が入っていたので、1月いっぱいで休院するかかりつけの心療内科に診断書を貰いに行きました。

 懸案事項の一つがこれで解決。少し嬉しい瞬間です。

 ただ、午前中の診察のみということで、予約時間が10時半と厳しめでした。


 一番の問題は、修学旅行。

 果たしていくのかどうかということ。

 キャンセル料のこともあるので、早く決めなければならないのです。

 本人は、あわよくば東京でガッティーナちゃんと待ち合わせしたいと、そればかり。行ったことのないディズニーも確かに気になるし、学校で修学旅行の話も聞いて、行くべきだろうなという気持ちだったようです。

 行くとか行かないとか、どちらかに決めようとすれば簡単に決められるような気もしましたが、それぞれデメリットを考えるとなんとも言えなくなります。

 行くと決まったときのデメリット……そもそも電車に間に合うか。やはり東京まで送ることになるのか。日程を乗り切れるか。ホテルで待機する時間が長くならないか。

 行かないと決まったときのデメリット……修学旅行という中学最大の行事を棒に振る。思い出は残らない。

 2月2日金曜日に保護者向けの事前説明会があるそうなので、そこで色々と聞きまくるしかないと、このときは決定を保留しました。

「修学旅行行きたい?」

 以前は直ぐに行きたいと帰ってきたのですが、だんだん、気持ちも揺らぎ始めてきたのでしょう。次女は少し悩んで、

「半々かなぁ」

 と答えるようになっていました。 

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