次女と群馬の友だち

画面の向こう

 学校に行ったり行かなかったりを繰り返していた11月前半。とても大きな出来事がありました。

 それは私たち親にとっては突然の出来事でした。

 しかし、次女にとっては待ちに待った出来事でした。

 整理の意味も込めて、時系列順に思い出せるだけ思いだして書いてみます。


 まず、11月初めの時点で、次女は昼夜逆転の生活をしていました。

 体調の良い日は学校へ、先生の車に乗せられて行き、帰りはとぼとぼと歩いて帰る、もしくは送って貰う。

 体調の悪い日は家でゴロゴロとしていました。

 夜中の2時~3時に眠って、朝ではなく昼の12時前後にのっそりと起き、それから朝ご飯と称して14時~15時頃に一食目を食べていたようです。

 18時過ぎに私が帰ってくると、晩ご飯までお腹の間に合わない小さい子たちにお菓子をあげていたのですが、そこでせんべいやクッキー、チョコなどを二つ選んで食べます。

 そして20時半頃にやっと晩ご飯。ここで家族と一緒に一人前より少し少なめ程度にご飯を食べ、夜中23時頃、お腹が空いたとまた何かしら口にして、2時過ぎぐらいに寝る……という生活でした。

 夜中眠れないことが多かったので、その間LINEをしていたようだというのは前にも書きました。

 とても仲のよい子だったので、ずっと飽きずに通話を続けていたようです。朝方起こしに行くと、最後のやりとりが通知画面に残っていて、「何やってんだか」と思って見ていたものでした。


 その子とは1年の頃、同じアニメファンのグループで知り合ったようです。

 なりきりチャット、と言って分かる人と分からない人がいると思うのですが、要するに好きなアニメのキャラになりきって会話するということをしていたようなのですね。自分は○○で、あの人は○○で……という感じで、楽しくやっていて、そのうち意気投合し、個別にやりとりをしていたらしいのです。

 長女も同じグループに入っていたことがあったのかどうか、とにかく姉妹で仲良くしていたのは知っていました。

 最初は文章でのやりとり、そのうち音声通話へと移行していったようです。


 音声通話もしていたので、相手が女の子だということは知っていたそうです。

 年の頃も一緒で、同じ年で、絵が上手くてきれい好きで……。色んなことを、知っていました。

 学校に行くことの少なくなった次女にとっては、とても楽しいひとときだったのだと思います。


 そうしてやりとりしているのを知って、このまま夜中のやりとりにのめり込んでは良くないと思った私は、確かこう言ったのです。

「手紙でやりとりする方法もあるのに」

 昔々、私たちアラフォー世代がまだ高校生だった頃。やりとりするのは全部手紙でした。

 同人誌の奥付には個人宅の住所が堂々と掲載されていました。

 イラストやアニメの雑誌で文通相手募集のコーナーを見て、いろんな人と文通しました。一番多いときで5~6人と文通していました。

 ところが今は、個人情報保護の関係で、そういったことはなくなっていきました。

 手紙というのは、古い手段になってしまっていたのです。

 私の話を聞いたからかどうかはわかりませんが、そのうち、互いの住所が知りたいという話になっていったようです。

 ただ、LINEの履歴に住所が残るような方法ではダメだという話を伝えました。

 この頃になると、ビデオ通話もちょこちょこやっていたようでしたので、映像で互いの住所の書いた紙を映すなどして、文字として残さないようにすれば良いんじゃないのと言いました。

 アドバイス通りにしたのかどうかは知りません。

 ただ、お互いの住所が分かり、一喜一憂していたようです。

 こっちは山形、あっちは群馬。

 遠いねぇ、都会だねぇ、田舎だねぇと。

 そして、今の子たちは凄いですね、Googleアースで互いの家を探しあったようです。そして、実在する人物なのだと、確かめ合ったようなのでした。


 そうこうしているうちに、どんどん彼女たちのなかに、とある感情が目覚めていきます。

 同じ中学2年生。

 好きなアニメは一緒。

 お絵かきも好き。

 話が合う。

 共感出来る。

 そして、お互い、学校に行っていない。

 住んでいるところが違えど、気持ちは通じ合っていたようなのでした。

 どうしてこんなにも遠いところにいるんだろう、そう思ったら、更に思いは募ってゆきます。

 二人は、東北と関東という距離を身近に感じながらも、同時に、こう思い続けたようなのです。



 ――会いたい、と。

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