斬られ役(影)、マジで焦る
264-①
「うおおおおっ……なっ!?」
白の影魔獣は、左右の巨大な副腕でネキリ・ナ・デギリの刀身を掴んで影光の渾身の一撃を止めた。
「くそがっ……なんて往生際の悪い!! とっとと……くたばれ……っ!!」
影光は焦った。早く決着を付けなければ──
「うっ!?」
〔どうした!?〕
突如として、影光の両腕が粉々に砕け散った。
「なん……のおおおっ!!」
両腕という支えを突然失って、前のめりに体勢を崩しながらも、影光は咄嗟に腰に帯びていた
爪先から影醒刃の刀身を発生させ、後ろ回し蹴りでネキリ・ナ・デギリの刀身を掴んでいる敵の左右の副腕の肘から先を斬り飛ばし、追撃の右足刀を叩き込んで敵を大きく吹っ飛ばしたが、蹴り終わると同時に今度は両足と背中の翼が砕け散ってしまった。
落下し、地面に突き立ったネキリ・ナ・デギリが、四肢を失い
〔どうしたというのだ!? 我が相棒よ!?〕
「最初にコイツに腹を貫かれた時に……どうやら俺の
〔何だと!? 早く再生能力で──〕
「いや、それが……今まで核に傷を負った事が無かったから知らなかったんだが、核は再生能力では修復出来ないらしい……」
〔何と言う事だ……むっ!?〕
ネキリ・ナ・デギリの視線の先では、蹴り飛ばされた白の影魔獣がゆっくりと起き上がっていた。
立ち上がった白の影魔獣は背中から無数の光る触手をどこかへ伸ばした。おそらく、影光の猛攻によって受けたダメージが大きく、自前の回復能力に加えて、まだ排除されていない影魔獣を取り込んで損傷箇所を修復するつもりなのだろう。
影光も失った四肢を再生させようとしているが、核を損傷したせいなのか、再生の速度が通常時に比べ極度に遅い。
「くそっ、コイツは……マジでヤバいかもな」
「……私に任せなさい、14号」
シルエッタが 現れた。
「シルエッタ!? こんな所で何してんだ!? 危ないから城内に戻れ!!」
「様々な方法で核の制御を試みましたが、どれも上手くいきませんでした。もはや……この方法しかないようです」
そう言うとシルエッタは着用していた暗黒教団のロングコートの内ポケットから、ある物を取り出した。
「それは……!?」
シルエッタが取り出したのは柄頭同士を長い紐で繋いだ、二本の操影刀……《操影刀・双頭蛇改44式》だった。
影光は、ナジミやフリード達から聞いた事があった。両端の刀を互いの影に突き立てる事で、魂を入れ替えてしまうという、恐ろしい操影刀の事を。
「…………シルエッタ、お前まさか!!」
「私とあの影魔獣の魂を入れ替えて、直接制御を試みます。そして14号、貴方に命じます……互いの魂が入れ替わった後、速やかに私の肉体ごとあの影魔獣を葬り、核も粉々に破壊するのです」
「はぁ!? ふざけんな!!」
「私が死ねば貴方も消えてしまうのは分かっています。でも、核を破壊するには、もはやこの方法しか──」
「オイコラ……お前、今までどれだけ多くの人の生命を粗末にしてきたと思ってんだ……!!」
影光の言葉にシルエッタの胸は締め付けられた。
「お前も含めて!! これ以上、生命を粗末に扱う事は許さねぇ!! マナだって悲しむ!! あんなカス野郎は今すぐ俺がブチのめしてやるから、大人しく待ってろコノヤロー!!」
影光はそう言ったものの、シルエッタの目には、四肢が粉々に砕け、満身創痍の影光に白の影魔獣を倒す事は不可能だと思えた。
それにしても……とシルエッタは思う。実験体14号は、作り出した当初は影魔獣らしい凶暴性や残虐性を持っていたのに、今ではその凶暴性や残虐性はほとんど感じられなくなっている。
本来穏やかであったはずの自分は悪しき心に囚われ、その自分によって生み出された、本来凶悪であるはずの影魔獣が穏やかな心を持つ……
「やはり貴方はとんでもない失敗作です。最後の最後まで、私の命令を聞いてくれないのですから……」
シルエッタは自嘲気味に微笑むと、ゆっくりと自分の影に操影刀・双頭蛇の片方を突き刺した。
「や、やめろ!!」
「頼みましたよ…………影光」
もう片方の双影刀が白の影魔獣の影に向かって放り投げられようとしたその時!!
「うおおおおおおおおお…………………らぁっ!!」
「うぶっ!?」
もの凄い勢いで走ってきた武光が、シルエッタの顔面に越○詩郎ばりのヒップアタックをブチかました!!
「えっ!? ほ、本体ィッ!?」
シルエッタをふっ飛ばした武光は、天に向かって高らかに吼えた。
「天下御免の斬られ役ッッッ!! 唐観武光……見参ッッッ!!」
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