オールスター、バトる(中編)


 172-①


 クレナ達がクウレツオウ01と戦闘を繰り広げる一方で、ミトとミナハはカイコウオウ03と対峙していた。


「さっきはよくもやってくれたね……お礼をしなくっちゃ♪」


 03は斬られた左腕を再生させると、両腕を前に出して構えた。

 両腕の鮫が『喰い殺してやる!!』と言わんばかりに鋭い歯をガチガチと噛み合わせる。


 並の人間なら、恐怖で足がすくみそうな状況だが、ミトは、まるで動じる事なく、エメラルド色の瞳で03を見据えた。

 民を守る為ならば、数倍の敵を前にしても臆さず敢然と立ち向かい、民からは『救国の英雄姫』、共に旅をしていた武光からは『いや……あんなもん、血の気の多い高貴なイノシシっすわ!!』と称される女傑じょけつである。


「行くわよ、カヤ!!」

うけたまわりました、姫様!!〕


 ミトは愛刀である《宝剣カヤ・ビラキ》を構えると、猛然と突撃した。


「でやぁぁぁっ!!」

「わわっ!?」


 まさか、両腕の鮫が待ち構えているふところ目掛けて、いきなり真っ正面から突っ込んで来るとはつゆほども思っていなかった03は、慌てて両腕を交差させてミトの刺突を防いだ。


「ミナハ、左に──」

「やぁぁぁぁぁっ!!」


 ミトが命じる前に、既にミナハは03の左側面に回り込み、左下から右上へと逆袈裟を繰り出した。


「おっと!?」


 03は後方へと跳び退いて、ミナハの斬撃を躱したが、ミナハが逆袈裟に振り上げた斧薙刀の下をミトが姿勢を低くして通り抜けながら更に前へと突進する。


「はあああああっ!!」

「くっ……!!」


 横薙ぎに振るわれた刃を03は左右の鮫で掴んで、受け止めた。


「今よ、ミナ──」


 またしても、ミトが命じる前にミナハは03の背後に回り込み、驚天動地を振り上げていた。


「せいやぁぁぁっっっ!!」

「せ、背ビレ!!」


 03は背中から青く透き通った鮫の背ビレを出現させて斬撃を防いだ。


 ミトはミナハの一連の立ち回りを見て満足げに頷いた。


「成長しましたね……見事です、ミナハ=ブルシャーク!!」

「は、ハイ!! 連携は隊長殿にお芝居の稽古や『ひーろーしょー』の公演で鍛えらましたから!!」

「お芝居って……貴女達、ちゃんと勤めを果たしてたんでしょうね!?」

「も、もちろんです!! って……うわっ!?」

「どーん♪」


 ミトとミナハは03に弾き飛ばされた。


「ふふふ♪ 貴女達、なかなか楽しませてくれるじゃない♪」


 03はそう言って笑ったが、その笑顔は引きつり、こめかみには青筋が浮いてピクピクと痙攣けいれんしている。危険な雰囲気を感じ取った宝剣カヤ・ビラキがミトに注意を促す。


〔姫様、お気をつけ下さいますよう!!〕

「ええ……分かっているわ。ミナハ=ブルシャーク!!」

「ハッ!!」

「アナザワルド王国第三王女、ミト=アナザワルドが命じます。私を……守りなさい!!」


 ミトの命令にミナハは胸が詰まりそうになった。ミト姫にとって、今の自分は『守るべき存在』ではなく、『自分を守ってくれる存在』として認められたのだ。


「……この生命に替えましても!!」


 ミナハの返答を聞いたミトは苦笑した。


「それはダメよ? 死んだら私を守れないでしょう? だから、死ぬ事は絶対に許しません!! 死んだら主命違反で処刑ですからね?」

「ハイ!!」

「いつまで下らない事喋ってるのよ♪ 二人共噛み殺してあげるから早くかかってきなよ♪」


 二人の視線の先では、03があざけるような笑みを浮かべている。


「行くわよミナハ、あの者を……処刑します!!」

「ハッ!!」


 ミトとミナハは03に向かって突撃した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る