バカヤロー共、やっちまう

 


 130-①


 勇者の仲間達目掛けて突撃する……影光の考えを聞いたガロウは影光に詰め寄った。


「影光お前……一体何を考えている!?」

「ふふん、俺……と言うか、正確には俺の本体だけど、勇者の仲間達とは戦友なんだ。だから彼らと接触して……密かに味方に引き込む!!」

「何……だと!?」

「この砦も明け渡すフリをして一時的に預かってもらって、その間に近くの砦に援軍を求めに行こうぜ」


 影光の突飛とっぴ過ぎる策を聞いて四天王達はあんぐりと口を開けた。


「いやー、それにしてもまさか敵にヴァンプさん達がいるとは……何たる僥倖ぎょうこう!! ヴァンプさん達がいなかったら尻尾巻いて逃げるしかなかったぜ」


 喜ぶ影光を見てフォルトゥナが不安げな声を上げる。


「で、でも団長!! 勇者の仲間達と接触するって言ったって、その為には影魔獣の大群を掻き分けながら突き進まなきゃいけないんだよ!?」

「ほう……『敵の大群をき分けて』……と、言う事はヴァンプさん達がいたのは敵軍の後方って事だな?」

「うん、最後尾だったよ!!」

「なるほど……なら俺の想像通りのはずだ、行ける!!」


 フォルトゥナの言葉を聞いてなお……いや、むしろより強く成功を確信している影光をキサイはいさめた。


「落ち着いてください影光さん、敵は三百もいるんですよ!? そんな中に飛び込んだら、命がいくつあっても足りませんよ!?」

「フフン、心配ない!!」

「心配ないって……一体何を根拠に……!?」

「根拠だったら、俺にはこれ以上ない根拠が周りにある。俺には……お前達がついているッッッ!!」


 キサイは気付いた。表情こそニコニコしているものの目がマジだ。


「えぇぇぇ……そんな無茶な……ガロウさん達も黙ってないで影光さんの説得を手伝ってくださいよ」


 キサイはガロウ達に影光の説得を手伝ってもらおうとしたが……


「フッ…………そうだな…………やっちまうか」

「ガロウさん!? やっちまわないですよ!?」

「グォガアアアアアッ!!」

「レムのすけさんまで!? よ、ヨミさん──」

「仕方ないわね、どうせなら派手に殺戮してやりましょう?」

「ガロウには負けてられない!! アタシも行く!!」

「「「我々はどこまでもヨミ様と共に!!」」」

「フォルトゥナさん!? それに竜人の皆さんまで!? と言うか竜人の皆さんはいつの間に……」

「……お前はどうする、キサイ?」


 ガロウに聞かれて、キサイはガクリと肩を落として盛大に溜め息をいた。


「はぁぁぁぁぁ……全くもう……分かりましたよ!!」


 それを聞いた一同は、ニヤリと笑った。


「で……策はあるか?」


 影光の質問に対し、キサイは不敵な笑みを浮かべ、そして言い放った。


「あるかバカヤロー!! 事ここに至っては、もはや策もヘチマもありません!! 一丸となって敵陣に斬り込み、死ぬ気で敵を蹴散らして目標までの道をこじ開けるのみです!!」


 それを聞いた一同は盛大にき出した。


「良いな、気にいった!! それじゃあいっちょ……やっちまおうぜ!!」



 ……こうして、天驚魔刃団バカヤロー共は、迫り来る敵軍目掛けて突撃した。


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