隊員達、協議する
103-①
王国軍最強の将が語った『三年前、武光と殴り合って完膚無きまでに叩きのめされた』という言葉を聞いて、フリードと三人娘はすぐさま輪になり、互いに顔を見合わせた。
「いやいやいやいや!! アニキがあの白銀の死神ロイ=デストを完膚無きまでにブチのめしたって!?」
「無い無い無い無い!! だってあのお方は王国軍最強の将軍なんだよ!?」
「そうだ!! ロイ将軍は先の大戦でも、最も多くの魔族を討ち取った天下無双の猛将なのだぞ!!」
「き、きっと『ロイ将軍が武光隊長を完膚無きまでに叩きのめした』の間違いですよ。言い間違いなんて誰にだってあります……」
ヒソヒソと話す四人にロイが声をかけた。
「いや、間違っていないぞ? 私が、お前達の隊長に、叩きのめされたのだ」
四人は再び輪になって話し合った後、口々に質問した。
「ひょっとして、体調がものっっっ凄ーーーーーく悪かったんですか?」
「まさか、寝込みを襲われたり食事に痺れ薬を盛られたのでは……?」
「あ、あるいは……ひ、人質を取られていたりとか……?」
「もしかして、ウ◯コ死ぬほど我慢してたんスか?」
「……どれも違う、私は真っ向から戦ってお前達の隊長に敗れた」
三度、四人は輪になって話し合った後……四人を代表してミナハがロイに告げた。
「協議の結果、『隊長殿ではどう頑張ってもロイ将軍には勝つのは無理!!』という事に決まりました!!」
武光のあまりの言われように、ロイは小さく溜め息を吐くと、近くに立っていたナジミに聞いた。
「仮面の女……お前、アスタトの巫女だろう? アイツは部下に嫌われてるのだな……」
「そ、そんな事ありませんよ!! ね、皆!?」
ナジミの問いかけに四人は大きく頷いた。
「あたり前じゃん!! アニキは俺達皆のアニキだぜ!!」
「隊長と一緒にいるの楽しいですよ!!」
「隊長殿は……信頼出来るお方です!!」
「や、優しい方です……武光隊長は!!」
「フフ……そうか、ならば良い」
四人の言葉を聞いて満足げに頷くロイに対し、ナジミは肩を
「まあ……お調子者で、だらしない所とかダメダメな所もいっぱいありますけどね、武光様は」
「またまた〜そんな事言っちゃって〜、
フリードに言われて、ナジミの顔は瞬時に赤くなった。
「そっ……そんな事無いわよ!? ね、クレナちゃん!?」
「いえ、めちゃくちゃ出てますよ? 好き好き光線。ね、ミーナ?」
「ああ、事ある毎に出てるな……好き好き光線。なあキクチナ?」
「は、はい!! で、出まくりです、好き好き光線」
「ミナハちゃんにキクチナちゃんまで!? 四人共……私をからかって遊んだりする所まで武光様に似なくて良いんですからねっ!? 光線なんて出してませんから!!」
「えー? じゃあ姐さんはアニキの事好きじゃないの?」
「そんなわけ無いでしょう!? 大大大大大好きですっっっ!! ……って、何言わせるんですか、もーーーーー!!」
……全く、愉快な連中だ。ナジミ達を見て、ロイは小さく含み笑いをした。
「とにかく、私がお前達の隊長に叩きのめされたのは事実だ。奴も言っていただろう『お礼参り──』……そうか、なるほど」
今更ながら、ロイは気付いた。
「……奴め、私に三年前の報復をされると勘違いしているのか」
全く……相変わらず失礼な奴だ。そう言えば……初めて出会った日も騙し討ちで肘打ちを喰らわせてきたな。つくづく失礼な奴だ。
ロイは苦笑混じりにナジミに声を掛けた。
「……アスタトの巫女よ」
「は、ハイ!!」
「二つ、頼みがある」
「何でしょう?」
「奴が戻ってきたら、『お前に危害を加えるつもりは無いから、一度会いに来い』と伝えてくれ」
「分かりました。もう一つの頼みというのは……ひっ?」
ロイはナジミのド真ん前に立ち、ナジミの
「な……何でしょう!?」
「……お前のその愛くるしい子猫の仮面、どこで売っているか是非教えてくれ!!」
フリード達は四度(以下略)
「うっわ、あの仮面が『猫』っていう奴初めて見たぜ……」
「どう見てもキツネでしょ、アレは」
「私は初見で物の怪の
「す、少なくとも猫には見えません」
「聞こえてるわよ、四人共……!!」
四人が振り向くと、そこにはプンスコと怒るナジミの姿があった。
「四人共、あとでお説教ですからね……!!」
「「「「えぇーーー!!」」」」
「つべこべ言わない!! 副隊長命令です、武光様を探すのよ!!」
「
「うるさいですよ、早く行きなさい!! シャー!!」
「何も
武光を探して走り去ったナジミ達を見送った後、ロイは呟いた。
「しまった……あの猫の仮面、どこで売っているかまだ聞いていない」
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