少女達、懇願する
12-①
武光は戸惑った。
「……え? ちょっと待って……その犬の名前、『たけみつ』って言うんか……?」
「そ、そうよ!! それがどうしたって言うのよ!!」
武光の質問に対し、赤い鎧の少女は噛み付くように答えた。
「いや、俺と同じ名前やから……」
「はぁ!? 適当な事言わないでよ!! 貴方みたいな野盗と……姫様の愛犬の名前が同じワケないでしょ!!」
「お、おいクレナ!!」
「く、クレナさん!!」
「ハッ!? ご、ごめん……ミーナ、キクちゃん!!」
『ミーナ』こと、青い鎧の少女、ミナハ=ブルシャークと、『キクちゃん』こと、黄色い鎧の少女キクチナ=イェロパンサに
焦りまくる少女達に武光は質問した。
「その犬が『姫様の愛犬』っちゅう事は……この先に飼い主の姫様とやらもおるって事やな?」
「く、口が裂けてもそれは言えん!!」
「そーよ!! 言えないわ!!」
「い、言えません!!」
「うん、その反応は『います』って言うてるようなもんやな」
武光にツッコまれて、少女達はぐぬぬと
「もしかしてやけど、その『姫様』って……ミトの事か?」
武光は、前回この世界に連れて来られた際に、共に魔王討伐の旅をした剣の天才にして、アナザワルド王国第三王女である少女の名を出したが、名前を出した途端、少女達に激しく
「き、貴様っ……!! 我らが姫、アナザワルド王国第三王女、ミト=アナザワルド様を呼び捨てにするとは……!!」
「野盗め……何て無礼なの……!!」
「ゆ、許せません……!!」
「ちょっ、ちょっと待て……って、わーーーーーっ!?」
怒れる少女達にボコボコにされる武光を見て、武光が強いのか弱いのか、再び分からなくなってしまったフリードであった。
「くっ……ええ加減にせえコラアアアアア!!」
ボコボコにされていた武光が、とうとうキレた。
「ええぃ……者共、控えぃ!! これが目に……入らぬかーーーっ!!」
「何だこの紙キレは……?」
「
「い、一体何なんでしょう……?」
武光の取り出した紙を、
武光が少女達に突き付けた紙には、アナザワルド王国第三王女である、ミト=アナザワルドに対し、『臣下の礼を取る事なく、対等に振る舞う事を許す』という
武光が取り出した紙……《友人御免状》は、先の大戦の折、アナザワルド王国の第三王女であるミトが、武光やナジミと魔王討伐の旅をする事となった際、国王がワガママ娘を
「そう言えば聞いた事がある……!!」
ただただ唖然としていた三人だったが、しばらくして、ミナハが声を発した。
「姫様の犬の名前は……先の大戦の
「へ、変な名前だと思っていたけど、そんな由来が……」
「ああ、眉毛がそっくりだと
それを聞いたキクチナは仔犬を抱き上げると、仔犬と武光の顔を交互に見比べた。
「た、確かに似てます!! ま、眉毛がそっくりです!!」
三人の少女は互いに見合わせ、頷き合った後、意を決したように武光に問うた。それは、かつてミト姫と共に旅をしていたという仲間が、困難に立ち向かわねばならぬ時、自分を奮い立たせる為によく言っていたという異国の言葉……
「「「 屁のつっぱりは……!?」」」
少女達からの問いに、武光は力強く答えた。
「いらんですよ!!」
少女達はぶるりと身を震わせた。
「おお……!!」
「言葉の意味は分からないけど……!!」
「と、とにかく凄い自信です……!!」
武光の答えを聞いた少女達は、力が抜けたかのように
「お、おい!? どないしたんや、大丈夫か!?」
武光達は少女達に駆け寄ったが、三人共ボロボロと大粒の涙を流している。武光はクレナを落ち着かせるように優しく声をかけた。
「何があったんや……?」
「ううっ…………お、お願い……しますっ……姫様を……姫様を助けてぇぇぇっ!!」
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