第21話 海の合宿その2

 部屋に戻り、有紗とゆっくりしていると廊下が騒がしくなってきた。

「お、そろそろ集まる頃だな」

 部屋から出ると恵美梨や花蓮先輩達がいつもの口喧嘩をしながら階段を降りていた。

 俺も続いて階段を降り、ロビーに集まる。

「みんな集まったわね。じゃ、これからの予定を報告します。まずはみんな海に入りたいと思うから、各自水着に着替えてまたここに集まってちょうだい」

「ええー……だったら最初からそういってよね…めんどくさいじゃん」

「ご、ごめんなさいね…。じゃ、そういう事だから。あと、みんな部屋には鍵を付けとくのよ?どっかの誰かが着替え中にいきなり入って来るかもしれないから」

 ……はいはい、さっきはどうもすみませんね!

 先生の支持に従って各自部屋に戻る。

 男の俺は直ぐに水着に着替えられたので、先にロビーで待ってる事にした。

 というかいつもなら有紗が一緒に行くと言うはずだが、今日は先に着替えてくれと言われた。

 今さら恥ずかしがるのはおかしいので、何か企んでいるんだろう。

 そう考えながらロビーのソファーで待ってると、不意に声をかけられた。

「お待たせ、紅蓮君」

「か、花蓮先輩。早かったですーー」

「……おおぅ」

 顔を上げた瞬間に肌色が目の前に広がる。

 水着姿の花蓮先輩。

 でも今日は水色のビキニを来ている。

 これは、おお……なかなかの健康的なお色気と言いますか…、競泳水着と違って肌の露出が多く、胸も強調されていて、エロい……。

「あら、紅蓮君…、そんなに見つめられたら少し恥ずかしいわ……」

「ご、ごめんなさい!!」

 やべぇ……、いつもより綺麗だし、エロいし、興奮するな…。

「コラ~!!花園紅蓮!いやらしい顔をしてお嬢さまの水着姿をジロジロ見るな!撃つぞ!」

「リオン先輩!?」

 銃を構えながら勢いよく階段を降りてきたリオン先輩。

 Tシャツに薄い上着、半ズボンを着用している。

「さ、流石に先輩は水着姿じゃないんですね…」

「あ、当たり前だろ!てかボクの事はどうでもいい!お嬢さまにあまり近づくな!お嬢さまもむやみに殿方の前でそのような格好は控えて下さい!」

「うるさいわね…わたしだって紅蓮君以外の人の前ではこんな格好しないわよ」

「お嬢さまはこの男に甘過ぎます!もっと疑って下さい!」

「ごめんなさいね、紅蓮君。……これだからこの子は連れてきたくなかったのだけれど…」

 やれやれとため息を付く花蓮先輩。

「ちょっとアンタ達うるさいわよ!全く…浮かれちゃって…」

 するとそこへいつぞやのビキニを着た恵美梨が降りてきた。

「お前は……やっぱり金髪だからビキニ似合うよな…」

「な、何ジロジロと見てんのよ!この変態!」

「なんだよ…せっかく褒めてやったのに…」

「う、うっさいっ!アンタ如きがアタシの美貌びぼうを語るなんて100年早いわよ!」

「でも100年も経ったらお前もう結構なおばあちゃんだぞ…」

「むき~っ!いちいちそういう事言うな!」

「みんな~もう揃ってる?」

 先生の声がして振り返ると、大胆なマイクロビキニを着た先生が立っていた。

「…ぶふっ!せ、先生!なんて格好してんすか!?」

 ……本当にこの人は頭が可笑しいんじゃないのか?

「あら?セクシーでしょ?」

 とセクシーポーズをとるが…、

「いえ、ここプライデートビーチですし、アピールするにしても若い男性が2人……。必死過ぎてただただ残念な人にしか見えません……」

「えぇ…」

「うん…」

 花蓮先輩と恵美梨も同意見。

 なんかもう、かわいそすぎて涙が出そうだよ…。

 誰か本当に早くもらってやってくれよ……。

「失礼ね!そんな事より花園君、この子、さっき廊下で恥ずかしがって階段を降りようとしなかったから無理矢理連れてきたんだけど…」

 そういえば先生の後ろにぴったりとくっついて姿を見せてくれないな。

「あ……お、お兄ちゃん……」

「どうした、瑠樺。俺に水着姿見せてくれるんじゃ無かったか?」

「……ふっふっふ。我は高貴なる者、人前で己の肌を見せることなどないのだ…」

「おい、ちょっと涙目になってるぞ?いいから隠れてないで出て来いって…」

「う、うん…。すぅ~……はぁ~……ぃよしっ……!」

 深呼吸をして覚悟を決めた瑠樺は俺の目の前に出てきた。

「ど、どうかな?お兄ちゃん……。似合ってるかな……?」

 おぉ、すげぇ……。

 普段はあまり肌を露出して無いからか、

 真っ白で綺麗な肌が際立って何とも魅力的な……。

「お、お兄ちゃん……そんなに見られたら、恥ずかしいよ……」

 瑠樺は顔を真っ赤にしてプルプル震えている。

「お、おう、すまんすまん。あまりにも魅力的でさ。凄く似合ってるよ」

 俺は瑠樺を安心させるため笑顔で答える。

「ほんと?ほんとに?嘘じゃない?」

「おう。ホントだ」

「…ふ、ふっふっふ……。流石は我が眷属よ。我の偉大なる姿に屈服するがよい…ふっふっふ」

 瑠樺は嬉しいのか恥ずかしいのか、耳まで赤くして高笑いしながら外へ飛び出して行った。

「ちょ、おい!?すみません、先生……瑠樺を追いかけてもらえますか?俺はちょっと用事があるので」

「え、ええ…。待ちなさい、月野さん!!」

 逃げる瑠樺を先生に追わせた俺はいつになっても降りてこない有紗を迎えに行く。

「すみません!先輩達も先に行ってて下さい!」

 階段を上りながら花蓮先輩達に声をかける。

「ええ、分かったわ。私達は道具の準備して待ってるから。飛鳥さん、手伝ってもらえるかしら?」

「しょ、しょうがないわね…。別にアンタのためじゃないんだからね!」

「あざっす!さてと……」

 部屋に篭ってる大魔王を何とかしなくちゃな!

「おい、有紗!いつまで待たせるんだ!!」

 バタン!

 と勢いドアを開けて叫ぶ。

 しかし……

「あ、あれ?」

 いないぞ?部屋の中にはいるはずの有紗がいない。

 俺はキョロキョロと周りを見ながら歩き進める。

 するとベットの布団が不自然に膨らんでいる。

 さてはそこに隠れてるな?

「……おい、何してんだよ…。みんな行っちまったぞーー」

 パサり、と布団をめくると、

「うお!?」

 中から手が出てきて強く引っ張られる。

 強引にベットに押し付けられ、上に有紗が乗りかかる。

「お、おい!何の真似だ……ぉぉっ!?」

 見上げると顔を真っ赤にし、己の真っ白な肌を更に強調させるように白のビキニを着た有紗が虚ろな表情で俺を見下ろしいる。

「兄さん……どうですか?初めてビキニを着たんですよ?」

「お…おう……いいんじゃねぇか?に、似合ってるぞ」

「本当ですか?嬉しいです……。それに、やっと2人きりになれましたね…」

 妖艶な笑みを浮かべて俺の肌を触ってきた。

「うひゃ!?」

「兄さん…可愛い声を出して……私、もう我慢出来ません……」

 ハァハァと息をあげ、顔を近付けてくる。

「や、やめろ変態!こんな所で発情しやがって」

「はい、私はこんな所で発情しちゃうメス犬です……どうかお仕置きをして下さい」

「ぶふっ……!て、てめぇなんて事言いやがる!?」

「さぁ、早く」

「こ、このおぉ……」

 スイッチが入り卑猥な言葉を発する有紗をどかそうとしたその時ーー

「ひぃ……!?」

 小さな悲鳴を聞き、ドアの方を向くと顔を青ざめてドン引いてる恵美梨なよ姿が……。

「ちょ、ちょっと待て!こ、これは……」

「……最低…」

「いや、だからそのっーー」

「……なかなか来ないから様子を見に来れば、こんな所でSMプレイなんかして……信じらんない!!」

 声を低くし、今度は顔を赤くして俺達を罵倒する。

「ご、ごめんてっ!そういうつもりじゃ無かったんだ!こいつが勝手にーー」

「もういい!2人で続きでもしてれば!?

 2度とアタシに話かけないでよね!!」

 バタン!!

 と扉を思いきり閉めて走っていく恵美梨。

 俺はそれを呆然と見つめる。

「……お、おい…お前のせいでめんどくさい事になっちまったぞ……」

「……ごめんなさい…。反省してます…」

「……ったく…」

 はぁ……どうやってあいつらの前に顔を出したら良いものか…。

 …めんどくせぇ……。





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