今。

ズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン‼︎


「……上手くいってるといいが」


カルロスを解放したあとすぐ、近くの茂みに隠れていたアドルフは、遠巻きにアーティファクトの砲撃音を耳に、静かにつぶやく。


アドルフは、アーティファクトをカルロスに渡していた。



――――数分前。


『やってくれ、このままじゃ埒があかない』


『だが……』


アドルフを急かすように言葉を使うカルロスだが、


いくらなんでも、他人を殺すことになる選択を躊躇いなくすることができるほど、アドルフの心は強くない。


『大丈夫、上手くやれば撒けるだろうし、そうなるように努力するさ、いつもと同じだ』



『……わかった』


カルロスの押しに負け、檻に手をかざすアドルフ。


『ならせめて、これを持っていけ、ステージ2のやつなら最大出力なら倒せるかもしれん』


そう言って哲郎から預かっているアーティファクトを檻の前に置くアドルフ。


『ありがとう』


バリン‼︎



ちょうどその時、檻は砕け、敵には通知がいく。


『あとは俺が、お前はせいぜい見つからないようにな』


『……わかった、頑張れよ』


それがカルロスとアドルフの最後の会話だった。


――――そして今。



「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ‼︎」


オリジナルのステージ3に上がった咆哮が、カルロスの死と、作戦の失敗を物語る。


反対方向で魔法陣の書き換えを知らせる通知を見たアドルフ。



「ただ、あっちもきっちり魔法陣を書き換えてくれたみたいだからな、完全に失敗というわけでもないか……」



五分……とはいかないが、わずかに希望は繋がった。


「……正念場だな、」


静かに立ち上がり、移動を開始する。


「今度は俺が頑張る番だな、カルロス」


今は亡き友に語りかけ、次に自分のすることを確認する。


「さて、いくか……」


アドルフが、覚悟を決め、目的地へ足を向け……


ヒュ〜ルルル……




ズドン!!


――――っ!?


アドルフの前にオリジナルが現れた。




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