作戦会議〜体制立て直し〜

工場裏。


助けに来た哲郎に連れられてやってきたジェームズ。


助けられる時、敵に通知が行くという話を聞いていたため、今もこの辺りにいると思われるオリジナルが飛んで帰って来るのではと不安に思っていたジェームズだったが、隠れながらの移動中の今でもあのバケモノの気配はなく、もう大丈夫だろうという哲郎の指示のもと、警戒を緩めて移動速度を上げて一気に来たのだ。



すると、少し先に煌々と燃えるキャンプファイアが見えた。


先に来ていたと思われるカルロスとアドルフが、例のキャンプファイアを囲んで手を振ってこっちにこいと合図する。


その様子を見て、二人とも無事に撒けたんだと安堵した。


無事キャンプファイアまでたどり着いた哲郎とジェームズも、キャンプファイアを囲んで座る。


「……さて、まずは全員の無事の集合に」


どこからか取り出した人数分のボトルを全員に配り、掲げるカルロス。


「乾杯‼︎」


「ん……」


「…………」


哲郎、アドルフ、ジェームズの順に続く。


ジェームズはまだ状況を理解しきれていないようだ。



すると、ジェームズの戸惑う様子に気づいたカルロスが、


「ああ、これが俺のスキル、『四次元ポケット』だ。能力は……」


酒を掲げて、


「酒が出せる」


「あははは‼︎」


「出た‼︎カルロスの十八番‼︎」


「…………」


何がおかしいのかわからない。



飲んで酔ったのか、おかしなノリに戸惑うジェームズ。


すると、滑ったことに気づいたカルロスが気まずそうに咳払いして、



「……というのは冗談で、医療道具がいくらでも用意できるんだ。」


さっき出していた包帯をいくつか出してみせる。


ちなみにさっき出していた酒は、医療道具扱いされているらしい。


「直接的な戦闘能力はないが、役に立つ。」


「ああ、」


「戦闘時にメディックは必須だからな」


哲郎とアドルフ。



「お前たちは俺とは違い、それぞれアイテムを一つしか持てない。持っとけ」


全員に一つずつ包帯を渡して行くカルロス。


「この包帯は巻けば一度だけだが、俺が使うように傷を完治させることができる。」



配り終えたカルロスが、包帯の力について説明をする。


「お二人は知ってるだろうが、ジェームズは初めてだからな、さっき見せたようにどこでもいいから巻き付けろ、そしたら傷を治せる」


「……わかった」


雑な説明ではあるが、使い方は見ていたので理解するのが早かった。

問題ないと包帯をポケットにしまうジェームズ。


カルロスは、一息置いて、次の話を始める。


「では、これからの役割の話をしようか」


緊張が走る。



これから、


つまはりは、あのバケモノとのことだ。



「まず最初に、状況整理だ。」


カルロスは、珍しく真剣な顔で話す。


「現状、俺とジェームズと哲郎は一回、アドルフは2回殺されている。まだ一人もかけてはないが、厳しい状況だ」


「そしてヤツはステージ2。ステージ1の間に哲郎がダメージを与えてくれてたのが唯一の救いだ。」


「何より魔法陣が一つも書き換えられてない」


哲郎が続ける。



「話を折ってすまんが、その魔法陣というのは何なんだ?」

ジェームズが問う。


「ああ、すまんすまん、ジェームズは知らなかったか、」

カルロスの表情が緩み、魔法陣について説明してくれる。

「魔法陣ってのは、このフィールドを封印してる力の要みたいなものだ。」


「封印?」


「そう、さっきフィールドを走り回ってる時疑問に思わなかったか?どれだけ走っても一周して、気づけば最初の場所に帰ってきてることに」



「……そう言えば確かに」


思い当たる節があり、すんなり納得するジェームズ。


「つまりはこのフィールドは見えない結界に囲まれていて、俺たちはその中であのバケモノと一緒に閉じ込められてるんだ」



「で、このフィールド内のどこかには結界を維持している要があって、それが魔法陣ってわけだ」


ちなみに魔方陣は、全部で5つあって、結界の無力化にはその中から3つの魔法陣を書き換えなければならないらしい。


「その魔法陣を書き換えて、結界を無力化しないとここから脱出することはできない」



「……っっ⁉︎、ここから脱出できるのか?」


バケモノを倒さなくても生き残る方法がある。


カルロスからの突然の抜け道に驚いたジェームズ。


「ああ、奴らにはそれぞれ縄張りがあって、縄張りさえ出ればそれ以上追ってくることはない。」


「だが、当然あちらが簡単に俺たちを逃がしてくれるわけないよな」


手をひらひらさせて鼻で笑うアドルフ。



「魔法陣は常に奴らに警戒されている」


哲郎がすかさず補足を入れた。


「仮に魔法陣を見つけられても、書き換えるには最短でも1分はかかる。誰かがそれだけの時間を稼がないといけないってわけだ」


「なるほどな……」


ついさっき、自分の身で感じたため、それがどれだけ無謀なことか、想像に容易いと納得するジェームズ。


何の抵抗もしなければ、一人当たり10秒もあれば殺されてしまう。


1分という時間を稼ぐにはどうしてもヤツと戦わなければならないということだ。


そして俺たちを見失ったオリジナルは、魔法陣を張っていることだろう。



魔法陣に近づいた者から狙われれば、一方的になぶり殺しというわけだ。


「で、今からする話は俺たちが生き残る上で最も重要なことだ」


再び真剣な表情になるカルロス。


カルロスは、指を二本立て、


「二つだ、俺たちが生き残る道はふた通りある」


「まず一つ、誰かが魔法陣を書き換え、その間に残りの三人がヤツの気をひく」


で、3つの魔法陣を書き換えて結界を無力化、このフィールドから脱出するという道。


もう一つは、


「……ヤツを倒す‼︎」


カルロスに割り込む形で、力を込めてアドルフは告げた。


うんうん、と、うなずく哲郎とカルロス。


無言で考え込むジェームズ。


どう考えても勝てる気がしないジェームズは、これはないなと諦め、脱出する算段に切り替えようとしている。



今からする話というのは、


1、魔法陣を書き換えて脱出。


2、バケモノを倒して恐怖を取り除く。


この二択からどちらの道を選ぶかの話というわけだ。


どちらにしてもバケモノとは戦わなければならないし、危険は伴うが、生き残るにはバケモノという恐怖を取り除くことは必須、覚悟を決めなければならないのだと、ジェームズは自分にに言い聞かせた。

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