第14話

「お~い3にんとも~こっちゃ来い」


美紀、早紀、幸の3人に、数馬は手招きをする。


「どうしたんですか、おじさん」

「ああ、今日はな、これを選別してくれ」

「この小割したやつをですか」

「そうだ。出来たら呼んでくれ。俺は一服してくる」


ようやく選別か。

昨日まで、調子に乗って水減しどっさりやったからな。

選別も大変じゃろうな。


「え~、このままでもいいじゃん」

「何言ってんの美紀。それじゃいい刀ができないのよ」

「でも~、こんなに山のようにあったら、見ただけでうんざりするっていうのよ」

「まあ、たしかに」


お前らが使うための刀じゃ。

文句を言うのはやめるんじゃな。


「めんどくさいけど、しかたがないか」

1時間後

「全然減らないね」

「うん」

「今日中は無理そうですね」

さらに1時間後

「「「はあ~」」」

三人ともため息しか出ない。

さらに1時間後

「うが~~っ!!」

遂に美紀が壊れる。

「どんだけ小割してんだあのおやじ!!」

「私もそう思うけど、私たちもそれに加担してるんだよ」

「うぐっ」


三人とも早く終わらせなければならないと思っているようじゃな。

刀1本鍛えるだけあればいいのにな。

あとは、時間がある時に済ませればいいだけじゃ。

美紀たちが選別を早く終わらせようとしている頃、小夜は福岡の地にいた。

地にはいたが、ホテルに閉じこもっていた。


「小夜、少しは表に出たらどうだ。いい天気だぞ」

「嫌」


新潟のことが、よほどショックだたのか。

まあ、仕方ないな。

悪魔なんて呼ばれているようだが、心はまだ子供なのだからな。


「だって」

「ん、どうした?」

「外暑い」


そっちかよ!

心配して損したぜ。

まあ、落ち込むよりはましか。

しかし、少しは外に出たほうがいいだろうな。


「おい小夜。昼間に外に出ろなんて言わん。だが、夜くらいは外に出てもいいんじゃないか」

「う~ん。でも、ゴロゴロしてるの気持ちいい」

「そ、そうなのか」

「そう」


いかん。

このままでは、小夜の奴がダメになってしまう。

閉じこもりに。

俺は閉じこもり事態は否定しないが、小夜がそうなるのは困る。

俺の楽しみが無くなってしまう。

なんとかしないと。

う~ん、そうだな~・・・・おっ、そうだ。

この手があったではないか。


「小夜よ。体力をつけるために、何か食べに行ってはどうだ?例えばラーメンとか」


小夜の体が、ピクリと反応する。


「ラ、ラーメンは美味しいけど、今はいいや」

「そうか」


そう来ると思ったぜ。


「では、もつ鍋はどうだ」


さらに小夜の肩が反応する。


「も、もつ鍋もいらないもん」

「そうか」


もうひと押しだな。


「ならばこれはどうだ。サバの漬け丼なるものがあるらしいぞ。これならどうだ」

「なにそれ!食べたい!!」


食べ物につられるとは、簡単なやつだ。

小夜は、サバの漬け丼食べたさに夜の街を歩く。


「村正」

「どうした」

「あのお店にサバの漬け丼あると思う?」

「さあな。さっきからそんなことばかり考えているな。はいって店の店員にでも聞けばいいだろうが」

「だって・・・」


小夜の奴は、基本人見知りだ。

こんなときは、さらに人見知りになる。


「うが~っ、イライラする。さっさと行って聞いてこい」

「わ、わかった」


小夜は、意を決して店の扉を開けた。


「いらっしゃい!」

びくっ!

そして、小夜はその場に突っ立って言った。


「わ、わたし、サバづけどんたべたい」


このばか。

なんで片言なんだよ。


「は、はい。そこにお座りください」

「あ、ありがとござます」


はあ~。

見てらんねえな。

しかし小夜は、片言ながらお代わりを5杯もした。


「満足したか」

「うん、まんぞく。おなかいっぱい」

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