第355話 ショーリ 仮

 年が明け、パーカーの販売が正式に決定した。

 場所は横須賀中央にあるどぶ板通りだ。


 日付は、2月28日、3月1日の二日間。

 色は4色で値段は、いずれも4300円。

 

 すでに予約数は100着を越え、順調だ。


 後は、予約サイトとツイッターで宣伝し、当日、売るしかない。

 まったくの手探り状態だ。


 果たして当日、お客さんは来るのか。

 天候次第では、全然、客が来ないとも限らない。


 だが、ここまで来て逃げ出す訳にもいかない。




 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 毎晩、ウチにはメンバーの誰かが泊まりに来てくれた。

 まるで合宿のようだ。


 そんなある夜、ショーリと二人っきりになった。

 彼は人懐っこい笑みを浮かべ言った。

「オレ、東京へ行くから……!!」

「え…?」


「アニメの専門学校に行って、漫画家になるンだ!!」

「え、漫画家……!?」


「いつか、オレの漫画見てくれよな!!」

「ええ、もちろん……」


「ヨコスカ ネイビーパーカー… 頑張れよ!!」


「うん……!!」

「なんたって、オレは名付け親だからなァ~……!!」


「そうね…。初め、嫌で嫌で仕方なかったけど、今は愛着もあるし……」

「いつか、オレが……」

 ショーリがそこまで言った時、

「イチゴ~…!!」

 と、ゴンちゃんの声が聴こえてきた。


「はいはい! 今、行くから!!

 えっと、ショーリ!!

 なんか言った!?」


「え、いや、別に……」

「頑張ってね。漫画……!!」


「あ、あァ~!!」

「じゃぁ、何、ゴンちゃん!!」

 私はゴンちゃんの呼んだ方へ急いだ。

 あの時、ショーリは何が言いたかったのだろう。


 

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