第276話

 一瞬、何が起こったのか、解らなかった。

「ほら、起きたァ…!?」

 ショーリは、ハッと少しだけ顔を離した。

「え…? 何…!? 今のって、もしかして……!!」

 私は急いで唇に手を添えた。

 確かに、何かが触れたのだ。

 考えたくないが………。


「あぁ…、良かったぜ。起きて! さぁ、立てるゥ~…?」

 

「いや、あの…、ショーリ!!

 今、何した?」


「べ、別に…、何にもしてないよ!!」

 小刻みに首を振った。

 様子が可笑しい。視線がさ迷っていた。


「しただろ! おい!!」

「な、何にもしてないって…。」

 笑顔も心なしか引きつって見える。

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