朔~11~


「桜子、さっきはなんだったんだ?」


 そう声をかけると、キョロキョロして焦っているようだった。変なこと言っただろうか。それとも本当は話しかけられたくなかったのか。


 ど、どうしよう。


「あ、あっその、うん。昨日のことで謝りたくて」


 謝る? そうか、桜子も昨日のことをそういう風に思っていたのか。


「よかったー。俺酷いことしちまったから嫌われたかと思った。いやー、よかった、本当によかった」


 このときの俺は心の声が出ていることに全く気が付かなかった。


「俺のほうこそごめん。なんかこう、上手く言えないけど、とりあえずごめん」

「私のほうこそなんかごめんね」



 謝れた。ようやく謝ることが出来た。


 遠回りしたような感じはするが、これで元通りだよな?



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