072
「ノレイス国の間者だな」
「なんと、既にそこまで情報を……っ!?」
「性別は女だが、普通の男には興味がないようだ。好物はパンケーキで休日に行きつけの店に通っているそうだ。本当の名前は
「なんと……既にそこまで情報を…………」
あ、やべえ。
ミザリーがどん引きしてる。これはある意味、同音異義語なのではないか?
そう思うくらいには先程の返答と意味が違う気がする。
こりゃ、最終的に「男は嫌いだが、けむくじゃらの雄は好きかもしれない」って言われたのは内緒にした方が良さそうだな。
「ゴ、ゴホンッ!」
「はっ! これは失礼をっ!」
「む? 何かね? 私は咳払いをしただけだ」
「い、いえ、何でもありません。それであの女は今後どうするおつもりで?」
「まだ情報を引き出せる。私の許可なく危害を加えるな。三食昼寝付きを条件に出している。私の顔に泥を塗るなよ……?」
「はっ! かしこまりました!」
よし。
何とか乗り切ったぞ。
さて、ミザリーには別の命令も出しておかないとな。
「シンディに関する情報をまとめた後、頼みたい事がある」
「何でございましょう?」
「シンディに化けられる者はいるか?」
「ふふふふ、そういう事ですか」
「あぁ、ノレイス国に生きるシンディとして人界の情報を探ってもらう。ノレイス国の方針、作戦、資源……これらを洗いやつらの進行を防がねばならないからな」
「はっ! お任せください!」
◇◆◇ ◆◇◆
さて、あれから一ヶ月が経った。
やはり魔王と俺の魔力が作用している事もあり、人工林計画は物凄い勢いで進んだ。
既に果物を採れたという報告もあがっており、魔界に緑が増えてきた。
これにより土壌も良質なものへ変化している。
川に集う魚も増え、徐々に自給自足が出来るようになってきたと言えるだろう。
それ以上に変化が起きたのはやはりゴブリンたちだろうか……。
「全た~~~~い! 前へっ!」
ゴブリンキングのガジルの指示により、魔王軍ゴブリンランス武装兵団は規則正しい行進を始める。全員がゴブリンでありながら、ホブゴブリン以上の体躯を有し、精強さで言えばランクB冒険者のアッシュ君が手こずるレベルだろう。
つまり、ゴブリンたちの個人武力はランクCに匹敵する。
因みに、人界で設定されているゴブリンの討伐ランクは最低のFランクだそうだ。
当然、他のゴブリンたちも進化と呼べるような身体と変化している。
ホブゴブリンやゴブリンロード、ゴブリンジェネラルにゴブリンメイジ。彼らは
もし俺が人界の冒険者ギルドのマスターで、このゴブリン軍の討伐依頼を出すならば……間違いなくランクはS。それも、幾人ものランクS冒険者が必要だろう。
正直、俺でも相手したくないレベルだ。
「くかかかか! 壮観ですな、コディー様!」
ガジルも大きくなった。通常ゴブリンキングは二メートル程の身長だが、彼は既に三メートル半はあるだろう。単純計算で一日三センチメートル伸びた計算だが、この世界の常識はもはや地球の常識では語れないのだと理解している。
これはゴブリン軍に限った話ではない。あのブレイクも、ルピーも、ミザリーも、保有魔力がどんどん増えているのは、果たして良い事なのだろうか。
まぁ、それを制御して統括するのが俺の仕事だ。
だから今日も、頑張るしかない。
「ではこれより!
「「ギィァアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」」
うん、魔界って感じがする。人間から見たら完全に悪夢でしかない。
ノレイス国は目と鼻の先。既にいくつかの魔力反応が感知出来る事から、こちらの動向を探っているのだろう。
今日は魔界大門を作る大事な日。
石材の運搬から補給まで魔王軍が一丸となって行う大作戦である。
現場の指揮はオーガたちに任せている。
そして俺は、魔界大門が出来るまでの……
「コディー様! ノレイス国の動きがありやした!! ノレイス国の北門に兵や冒険者たちが続々と集結しておりやす!!!!」
そう、今日のコディーさんの仕事は……人間たちの妨害を防ぐ事。
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