【自主企画用】登場人物にインタビュー! ジャスパー編
ベネ・水代
奇妙な依頼
ん、ウチに手紙? わざわざありがとな。誰からやろ。
「ルピニアさんにクエストを依頼します」
……ってこれ、冒険の依頼状やんか。
なんや、差出人はフィオナはんか。買い物の人手でも足らんのやろか?
「……下記をジャスパーさんに質問してください。答えは羊皮紙に書いてフィオナまで提出をお願いします。報酬は……」
変な依頼やな。なんで自分で聞かんのやろ。まあウチは構わんけど。
ジャスパーは……たぶん訓練場やな。昨日も朝から晩まで剣を振っとったし。
ええと、羽根ペンとインク壷と。羊皮紙はこんくらいでええか。ほな行ってくるで。
「質問その1、簡単に自己紹介だそうや」
「今さらお前とフィオナさんに自己紹介してどうするんだ? ……まあいいけど。オレはジャスパー。獣人の戦士だ。〈ルーツ〉は犬。十五歳」
「……そういや年齢を聞いとらんかった。知らんことってあるもんやな」
「聞かれなかったからな。ルピニアはいくつなんだ?」
「トシの話はデリケートなんや。乙女に軽く聞いたらあかん。次いくで」
「質問その2、海と山はどっちが好きか。理由もつけてな」
「山のほうが好きだな。海は苦手だ」
「なんや、ひょっとして泳げんのか?」
「ちゃんと泳げるぞ。海の匂いは慣れるまで時間がかかるんだ。鼻の奥がヒリヒリするしな」
「潮の香りがきついんか。鼻がええと面倒なんやな」
「質問その3、今ほしいもの。……なんか答えが予想できるんやけど」
「長い剣と、金属の鎧。盾も大きいのがいい」
「思ったとおりやった。他のもんに興味ないんか?」
「別にないな。まあ金があればだいたい買えるし、一番ほしいのは金かもしれない」
「ほんま、あんたは分かりやすいわ」
「質問その4、趣味や特技。あんた、そもそも趣味あるんやっけ」
「剣の訓練なら飽きないぞ。覚えたい技はたくさんあるし、戦闘で上手く使えたら楽しい」
「……一応聞いとくけど。美味い食べ物とか、パリッとした服とか」
「そういうのはエルムが勝手に見つけてくる」
「よう分かった。次や」
「質問その5。どんな願いも一つだけ叶うなら、何を願うか。定番やなあ」
「どんな願いでも、か……」
「なんや真面目な顔して。強うなりたい言っとったやんか。望みは世界最強やないんか?」
「……強いだけじゃだめなんだ。きっと何かが足りない」
「何かって、なんのことや」
「オレにも分からない。……そうだな、もっと頭が良くなりたい。何をどうすればいいのか分かるくらい」
「ふうん。まあええわ。賢くなりたい、と」
「質問その6、好きな動物を三種類。色とか大きさとか、三つまで注文つけてええで」
「わりとなんでも好きだぞ。そういえば竜って動物に入るのか?」
「あー。セーフにしといたる。ドラゴンの分類は学者のケンカの元や、迂闊に聞いたらあかんで」
「そうなのか。特徴は三つだよな。でかい、空を飛ぶ、火を吐く」
「典型的なファイアドラゴンやな。あと二種類」
「思いつかない」
「そういや嫌いな動物はおるんか?」
「んー、ワニは無理だな。仲良くなれそうにない」
「無理やろな」
「質問その7。今後やってみたいこと」
「竜に勝ちたい」
「次いこか」
「質問その8、お悩み相談。友達の恋人を好きになってしまいました。どうすればいいでしょうか。……聞く相手を壮絶に間違えとるな」
「オレもそう思う」
「とりあえず、どう答えるんや」
「どうって言われても。ケンカするか諦めるか、選ぶしかないだろ」
「なんかアドバイスは?」
「しない。口を出したらだめだろ、そういうの」
「そう言うと思ったわ。口出しせん、と」
「質問その9、オオギリ……オオキリ? ってなんやろ。まあええか。あなたの家に手紙が届きました。そこには意外なことが書かれていました。果たしてその内容とは」
「いや、オレに聞かれても」
「たしかに質問になっとらんな。あとでフィオナはんに言っとくわ。次いくで」
「質問その10」
「あといくつあるんだ?」
「あと五問くらいや。あなたが恋人にしたいと思う異性の条件を五つ挙げてください。……いひひ」
「なんだよ、気味が悪い」
「定番やろ。きりきり答えんか」
「急に言われてもな……まあ、オレより頭がいいと助かる」
「殊勝やな。そんで?」
「うじうじ悩まないひとがいい。あとは金遣いが荒くなくて、ちょっと気が利くひとなら嬉しい」
「見た目には注文つけんのか?」
「そりゃ美人なら嬉しいけどさ。もしオレの目が見えなくなったら、顔がどうとか関係ないだろ。そうなっても一緒にいてくれるひとがいい」
「一途な性格美人、と。けっこうロマンチストやな」
「質問その11。もしも過去の世界と未来の世界、どちらかに行けるとしたら、どちらの世界に行って何をしたいですか」
「どっちも興味ない」
「未来にも興味ないんか? ドラゴンと戦っとる自分が見えるかもしれんで」
「いやな未来が見えて、変えることができないって分かったら、何もやる気になれないだろ。だったら知らないほうがいい」
「……まあそうやけど。意外と悲観的やな。ちょっと驚いたわ」
「質問その12。目の前に巨大なお城があるとします。その城の窓はいくつありますか」
「窓の数? でかい城なんだろ。百でも二百でもいいんじゃないか」
「窓が百を超えとったら相当なもんやけどな。そもそも城の窓は、低いところに空けるもんやなくて――」
「ああ分かった。百でいい」
「適当やなあ」
「質問その13。もしも明日、巨大な隕石が空から降ってきて世界が滅び」
「インセキってなんだ?」
「星の世界からでっかい石が、……あー。つまりこうや。明日、とんでもなくでかいドラゴンが飛んできて、町もひとも焼き尽くす。世界のどこへ逃げても無駄や。あんたどうする?」
「戦う」
「潰されるか、燃やされるだけやで」
「逃げても隠れても無駄なんだろ。だったら死ぬ気で戦う。もしかしたら誰かが生き残るかもしれない」
「……ん。それでええ」
「何がだ?」
「なんとなくや。あんたはそうでないとあかん」
「質問その14から16。ここはウチが適当に聞いてええそうや」
「何かあるか?」
「……なくもないけど。紙に書くほど大した話やない。飛ばしとこ」
「最後の質問。これを読んでいるひとへのメッセージをどうぞ。要はフィオナはんに言いたいことやな。なんかあるか」
「なんでルピニアに質問させたんだろ。直接オレに聞けば済むことなのに」
「答えに興味がないんやろ」
「興味がない? じゃあなんでこんなこと」
「さてなあ。次はあんたが頼まれるかもしれんで。たぶん相手はアトリやろな」
「……?」
ジャスパーが分からんのも無理ないわ。ウチも今気づいたとこやし。
どの質問も意味はないんや。
せやけど今、ウチがジャスパーに聞いたんは意味がある。
ウチらは命を預ける間柄やけど、まだお互いをよう知らん。
何が予想どおりで、何が意外やったか。一つでも多く知っとかなあかんのや。
フィオナはんの気遣い、さすがやな。できる大人って感じや。
それにしてもオオギリってなんやろ。古語か方言なんかな。
気になってあかんわ、早う聞いてみよ。
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