第86話 呼び出し

「あんた、これ凄いじゃないっ!」


ミズガルドは、改めてカルディナが撮ってきたSSを見て驚いた。

感情がむき出しになったベルラインのSSに。


「まだまだよ。そんなんじゃ、ベルサラ究極の一枚の足元にも及ばないわ。」


「ちょっ、あんた何処目指してるのよ・・・。」


「いいSSですね、ミズガルド全部私に送りなさい。」


ターヤが言った。


「私も欲しいです。」


「私もっ!」


ヨルムンガンドのギルドルームが大騒ぎになった。


「わかったから、ギルドメールで全員に送るから。」


ミズガルドは、ギルド全員にSSをメールした。


「この怒り具合が最高ですね。」


「こっちのも凛々しいわ。」


「しかし、怒ってるのばかりですね?」


ターヤが言った。


「まあ、殆どが団長を含む男性団員に向けてだけど。」


「殆どが?」


ミズガルドが聞いた。


「私も少し含まれていたり・・・。」


「た、大変ね。あんたも・・・。」


ミズガルドが少し同情した。


「この睨んでて凛々しいベル様は、何を睨んでるんですか?」


ヨルムンガンドのギルメンが聞いた。


「SS撮るのばれた時のかな。」


「あんたね・・・。」


「い、今は、気づかれてないわよ。多分・・・。」


「まあ、ベルさん位になるとSS撮られまくりですからね。いちいちは、気にしていられないでしょう。」


ターヤが言った。


「ごめん、個人トークが入ったんで。」


そう言って、カルディナは、輪の中から離れた。

カルディナが抜けても、ヨルムンガンドの面々は、SSの品評会を続けた。


「カルディナ、今いいですか?」


クレインが、個人トークしてきた。


「いいわよ。」


「新人さんのレベル上げを手伝って欲しいんですが?」


「ねえ、冷たいんじゃないの?私に個人トークする時って、レベル上げの時だけじゃない?」


「無理ならいいですよ?他の人誘いますし。」


「い、行くわよっ!」


「ミミズ狩りに行こうと思いますんで、他に誰か居たら連れて来て下さい。」


「今、誰誘ってるのよ?」


「あとは、ビショップさんだけです。」


「了解。あまり期待しないでね。」


「ええ、あまり期待はしていません。」


「ちょっ・・・。」


個人トークが終わり、カルディナは、ミズガルドの傍に戻った。


「リアカノから、新人のレベル上げ誘われたんで行ってくる。」


「ああ、自称リアカノでしょ?(笑)」


「ぬっ!」


「何処行くの?」


「ミミズ狩りよ。」


「へえ。行ってあげてもいいわよ?」


「はあ?ミズたんが?役に立つの?」


「あ、あんたねえ・・・。最強の魔術師の私を馬鹿にしてんの?」


「へええ~。そうなんだ・・・。」


本気にせず、軽く流した。


「あったまきたわっ!ターヤ、ちょっと出かけて来るから後よろしくね。」


「ミズガルド、程ほどにね。」


「わかってるわよ。」


「えー、ミズたん本当に来るの?」


「ちゃっちゃとミミズやっつけるわよ。」


「まあいいか。」


「あんたねえ、ヨルムンガンドのGM様が同行するのよ?もっと喜びなさいよ。」


「どういう風に?」


「いやっほーーーい。最強魔術師来たーーーーとか。」


「あー・・・。まあ行こうか。」


「くっ・・・。それより新人の心配はしないわけ?」


「特に興味ないけど。女性だといいなあ~。」


「リアル彼氏だったりして(笑)」


「なっ!!! そんな事あるわけないでしょっ!」


カルディナは冷静になって考えた。


【そうよ、そもそもあの子は、リアルは剣道で忙しいんだから。男子剣道部員であの子のお目にかなう奴なんていないし。新人さんもきっと女性だわ。】


そう自分に言い聞かそうとしたが、不安がよぎる。


【まてよ・・・。時野さんと一緒にうちの店に来たのは、そもそも何の集まりだったの?まさかコンパ?ないない。年齢差バラバラだったし・・・。いや、時野さんに年齢は関係ないわ。】


カルディナは、あの時のメンバーを思い浮かべた。


【よ、四対四・・・。ま、まさかっ!!!】


「ミズたん、急ぐわよ。」


「急にどうしたのよ?」


ミズガルドは、カルディナに引きずられるように、自分のギルドルームを後にした。

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