兄の物語[107]どちらにしろケチを付ける
「……暗ぇな」
「そうでしょうね」
冒険者ギルドに訪れると、ドーウルスとは全く違うと言っても過言ではない活気の無さを感じ取ったバルガスたち。
「早く討伐して、何とかしないとね」
自分は正義の英雄ではないと自覚はしている。
ただ、自分の力でバジリスクを討伐することが出来るという自信はある。
「すいません、ドーウルスから来た冒険者なのですが、バジリスクに関する情報を教えてもらえますか」
「ドーウルスからの……か、かしこまりました。少々お待ちください」
ドーウルスから来た冒険者。
その言葉を聞いて、受付嬢の顔にほんの少し、生気が戻った。
受付嬢であれば、ドーウルスで活動する冒険者たちの強さが、自分たちの街を拠点として活動する冒険者たちの平均レベルよりも高いことは把握していた。
「……本当に切羽詰まってる、って感じだね」
「それだけ被害が大きいのでしょうね」
「………………」
さすがにからかって良い雰囲気ではない事ぐらいは察することが出来るジェリス。
何か口にすれば、カルディアに頭を杖でぶん殴られると思い、冒険者ギルドを出るまで無言で過ごすと決めた。
「お、お待たせしました」
ダッシュで戻って来た受付嬢。
少し慌てながらも、バジリスクの情報、冒険者たちが遭遇した場所などをこと細かく伝えた。
「ありがとうございます。それじゃあ、早速行こうか」
気合を入れ直し、いざ出発。
と思ったタイミングで…………空気を読まないバカが言葉を漏らした。
「けっ、ガキなんかに何が出来るってんだ」
併設された酒場で呑んでいた三十代前半の冒険者。
わざわざ他の街から来た冒険者に向ける言葉ではなく、先程までクライレットたちに事細かく情報を伝えていた受付嬢は、本気でその冒険者を睨みつけた。
「バルガス、気にしなくて良いよ」
「……気にしてる時間が勿体無ぇってことか?」
「そうだね。それに、頑張ろうとしてる人にケチを付ける人は、その人たちが失敗しようと、成功してもケチを付けるから」
経験の重さを感じさせる言葉。
当然、その言葉は空気を読まないバカの耳にも入り、喧嘩を売られたと判断。
しかしクライレットたちは直ぐにギルドの外に出て……それを追いかけようとした空気を読まないバカは、受付嬢やギルド職員たちにがっちりと捕まり、無理矢理説教を食らわされた。
「百戦錬磨、といった雰囲気が出ていたな」
「そうかな? ただ……似た様な経験をしたことはあったから」
「そういえば、冒険者になる前は学園に通っていたんだったな」
クライレットが入学した際、まだゲインルート家の爵位は男爵。
幼少の頃から何かと目立つ存在だったということもあり、目の敵にする者が決して少なくなかった。
故に、どういった結果を出してもケチを付けられた経験が何度もあった。
「学園と言えば、多くの知識を学べるというイメージがあるが、実際はそうではないのか?」
「僕が通っていた学園は、貴族の令息や令嬢たちが通う学園だったからかな……本気で学びたくて学んでいる人達だけじゃないんだ」
貴族の家に生まれたからには……基本的に極潰し、いわゆるニートになることは出来ない。
そもそも物心つく前から多くの教育を受けるため、その辺りを気にしない者も多いが、騎士の道を目指している者であっても……全員が民たちを守るために騎士の道に進もうという志を持っているわけではない。
「にしてもあれだよな~、別に喧嘩売ったところであのおっさん、俺らに勝てる可能性? ぶっちゃけねぇのに、なんであんな意味もねぇ暴言吐いてきたんだ?」
「酔っていたから、自分に出来ない事を出来る可能性を持つ自分より若い者たちへの嫉妬でしょうね」
「お、おぉう……なんでそんなサラッと出てくるんだ?」
「本当かどうかなんて知らないわ。ただ、一応納得出来る理由があるかないかで、ストレスの大きさが変わってくるのよ」
これまで何度も似た様な言葉を吐かれ、なるべく冷静に対処してきたペトラではあるが、全くイラついてこなかった訳ではない。
初っ端からモヤモヤとした気持ちを抱えつつも、その気持ちは試験に挑戦する上で……切り捨てなければならなかった。
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